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…困った。全く手応えなし！夜、帰ってきたお父さんに泣きついて、しみ抜きを手伝ってもらう。あ、泣きついたっていうのはあくまで表現の一環であって、別に泣いたわけじゃない。
「落ちねぇな、これ本当にチョコレートか？」
面倒臭そうに私を見る父に注文表を見せる。名前欄には永見、と国語の教科書に載っているお手本のような字で彼の名前が書いてあり、父はため息をついた。永見さんのシャツを作業台に置き、私に連絡するよう伝えて家の方へ帰ってしまった。まぁ、お葬式帰りだし仕方ない、疲れてるんだ。
受話器を取って永見さんの連絡先を打つ。伝票なんて見なくても、もう覚えてしまった。3回目の途中でコール音が切れ、彼の声が聞こえた。
「こんばんは永見さん、##クリーニングのAです。シャツの事なんですが…その、父でも落とせなくて。その、」
「成る程、落ちないのならば仕方ありません。残念ですが、あれは破棄しておいて頂いてもよろしいですか？流石に大学へ着ていく事はできませんし。ありがとうございますね。」
明らかに落胆した声に罪悪感を抱く。受けた仕事も満足にこなせ無い人だと思われたかもしれない。通話を終わらせようとする彼を止め、やっぱりもう少し頑張りたいと伝えると、勿論だと言って貰えた。
「時間はいくらかかっても問題ありませんよ、ゆっくりで大丈夫です。此方としてもその方が
都合がいいって何だろう。よく分からないが受話器を下に戻し、今日はご飯を食べて寝る事にした。
*
お母さんが必死に何かを叫んでいて、泣き叫ぶような声に叩き起こされた。自分の部屋を飛び出て寝室へ向かうと、父が胸を苦しそうに抑えて床に蹲っている。母が父の寝巻きを捲ると、心臓辺りに、人の顔にも見えるような焦げ茶色のしみが浮かんでいた。
母が連絡したであろう消防隊が到着し、病院へ向かう。治療室に運ばれた父はすぐに出てきて、顔を伏せたお医者様であろうお方に、ご臨終です、と告げられた。
父は霊安室へ運び込まれ、母は横で泣き崩れていた。胸を見てみたが、しみは消えていた。ぼーっと父の顔にかけられた白い布を見ていると、真ん中あたりに、しみがある事に気づいた。
しみは布を覆い尽くし顔を描く。思わず悲鳴を上げ母を見ると、母も父と同じように胸を抑えて倒れていた。何も、考える事はできなかった。
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にあ - 待ってコメ欄に大好きな作者様がいるんだけど…いつも楽しく読ませて頂いてます作品更新頑張って下さい誠さんみそ漬けキュウリで殴るさん（限界オタク） (2022年2月26日 14時) (
レス) @page26 id: c982b0a7d0 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - あれ、もしかして40ページのtnと夢主ちゃんが住んでる家が高層マンションなのって逃げ出さないようにする為だったり…？誠さんのお話表現とかが美しすぎて本当に好きです… (2022年2月22日 7時) (レス) @page40 id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
誠(プロフ) - 紫紅兎さん» ありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです… (2020年12月26日 18時) (レス) id: b57bb5d927 (このIDを非表示/違反報告)
紫紅兎(プロフ) - 虫のeさんのお話がｯｯ好きすぎて…！！毎日朝昼晩と読ませていただいております…呪いをモチーフにしつつ…儚さもあり…誠さん天才か何かですか…まって尊いがすぎますよ…更新楽しみにしております…誠さんのペースで頑張って下さい (2020年12月26日 11時) (レス) id: fcae62d2ac (このIDを非表示/違反報告)
( ・∇・) - ページ40のお鍋が冷めるシーンが人の恋を表している感じがしてとても面白かったです！ (2020年11月15日 10時) (レス) id: fdab07ad69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：誠
| 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2020年7月17日 18時
