31 ページ32
「しゃ、しゃおちゃん…？え、あ、しゃおちゃん…？」
目の前でお揃いだったスカートを靡かせ、金髪をくるくると指に巻き付け弄ぶ彼女は、“あの子”そのものだった。理解した途端何も入っていない筈の胃から何かが込み上げ戻しそうになるが、無理矢理押し戻した。
「可哀想になぁA。あんなに求めとった子が、Aの大好きな子が、俺やったなんて思わんかったやろ？…今、Aの脳内は俺で支配されとるんよなぁ…めっちゃ嬉しいわ」
声はあの子の物なのに、聴き慣れない関西弁。そうだ、考えてみればシャオちゃんに1番心を許していた気がする。きっとシャオちゃんの、仕草とか、笑い方とか、そういう些細なことが“あの子”に似てたからなんだ。
もう割れる宝石は無い筈なのに、心臓辺りが抉り取られるように痛んだ。同時に私を縛り付けていた物が外れた気がして、体がすっと軽くなる。ねぇロボロさん、ロボロさんは知ってたんだ。モニターに映った“あの子”はシャオちゃんだったって事。
ずっと、ずっと騙されてたんだ。“あの子”の存在は全てマヤカシで、自分は敷かれたレールの上をずっと走ってた。シャオちゃんに手を伸ばして、ぎゅってしてと言い放つ。シャオちゃん、シャオちゃん、私、帰る場所無くなっちゃった。どうしよう、何処に帰ればいいの？
「よしよし、泣かんでええよ。ずっと此処に居ればええやん、な？全員歓迎するで」
分からない、自分は帰りたいのか、帰りたく無いのか。此処から出なきゃ、でも出てどうしよう？青いあの子が残ってる。青いあの子の名前は何だっけ？あの子とそんなに仲良かったっけ？家族も学校も、いつも通りなんだ。私1人居なくたって、世界は回り続けてるんだ。
「…ご飯食べて寝ような、疲れたやろ？あーんしたるからちょっと頑張ろうな。ええ子ええ子、俺はずっと側に居ったるから」
涙が少し止まったところで、シャオちゃんに箸を向けられた。本当は食欲など皆無だったが、シャオちゃんの喜ぶ顔が見たくて、咀嚼し嚥下し流し込む。シャオちゃん、シャオちゃん、私、どうするのが正解なのかな。此処から出るのか、それとも…
もう食べられないと分かったのか、シャオちゃんは箸を置いて私を膝に乗せ、頭を撫でてくれた。何度目かの眠り。目が覚めた時は何が起こるんだろう。”変わる“ことがこんなにも怖いだなんて思わなかった。次に訪れる変化に怯えながら目を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2217人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆう - 幸せなハッピーエンド(?)になって良かったです!! (5月22日 22時) (
レス) @page42 id: f98c154ca8 (このIDを非表示/違反報告)
はゆり - 上から目線失礼致しました (2023年4月27日 23時) (レス) id: 6422253908 (このIDを非表示/違反報告)
はゆり - ハッピーエンド感が漂ってますけどなんて言うんやろ深く？見たら意外とバッド？エンドですね！まぁ夢主ちゃんや、d！の人達が幸せなら私は何でも良いですけど。 面白い作品ありがとうございました！ 他の作品も好きです！これからも応援しています。頑張ってください (2023年4月27日 23時) (レス) @page42 id: 6422253908 (このIDを非表示/違反報告)
杏豆 - とってもおもしろかったです！素敵な作品ありがとうございました！ (2022年9月3日 11時) (レス) @page43 id: d80eb34582 (このIDを非表示/違反報告)
きつね君。(プロフ) - コメ失礼します。大好物が詰まりに詰まっていて無事昇天することができました!!素敵な作品をありがとうございます!! (2022年8月6日 6時) (レス) @page43 id: f4cd021470 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：誠
| 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2020年7月22日 21時
