すれ違う2つの心は

67th Love ページ21

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壱馬くんに抱きしめられた。



私の後頭部にある少しだけ震えている手は怒りを表しているのか、もっと違う感情なのか。





でもね、私ちゃんと見えちゃったんだ。





慎と村崎さんが一緒の傘に入って歩いていくのを。



楽しそうに笑い合いながら、まるでカップルかのように。





壱馬「ごめんな、果歩」



「大丈夫、」



壱馬「見た？」



「うん、見えちゃった、笑」



壱馬「あー、俺が抱きしめたの意味なかったかー笑」





そう言って笑う壱馬くんの顔は少し苦しそうで辛そうだった。



何か知ってるのかな。どういう気持ちで私に話しかけてるんだろう。





壱馬「………今日は、帰ろうか」



「うん、」



壱馬「俺やっぱりジム行くから、果歩は1人で帰りい」









壱馬くんがジムに行ってしまって、事務所の前に1人ポツンと佇む私。





やっぱり慎は村崎さんのことが好きになっちゃったのかな。



もう付き合ってるのかな。





1人で歩き始めて考えるのはそんなことばっかり。



でも、思ってたより冷静に考えてる自分がいて少し驚く。



もしかしたらこうなることを頭のどこかで予測してたのかもしれない。





焦り、不安というより｢慎は村崎さんみたいな人が好きなんだ｣っていう失望。



どちらかと言うとそっちの方が大きくて、自分と慎じゃ釣り合わないんだって思った。





だって、お似合いだったんだもん。



文句も嫌味も言えないくらいお似合い。





だからこそ悔しい。泣きたいくらい悔しくて辛い。



あの二人が、あの傘が私の頭に、心に、記憶に、焦げ付いたみたいに離れない。





「好きなんだ、私」



恋って苦しい。



そう確信した瞬間に感じるどうしようもないくらいの苦しみ。





ずっとモヤモヤして涙が出るくらいに胸が締め付けられる。



この感情が本当の恋なんだ。





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