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5話 ページ6

「君は……転入生の……」

「ねぇ、何がおかしいの?」

明るい声音。私の言葉を遮って尋ねられた言葉に、何故だか恐怖を覚えた。

「ああ、いや、なんで図書室に誰も居ないのかなー、と……」

「当たり前じゃないか。ここには、君と僕しか居ないんだから」

また、さっきと同じ明るい声。でもそれには、どこか棘があった。

「ま、まぁ……と、取り敢えず、私そろそろ帰るね」

段々寒くなってきた。彼が冷房でも付けたのだろうか?

一刻も早くそこを離れたくなり、言ってから入口に向かった。

そして、入口の所に居る彼とすれ違い様に、


どんっ。


鈍い音がした。

すれ違い様に腕を引かれ室内に引き戻されると、そのままバランスを崩し尻餅をついた。

驚いて、ぽかんと彼を見上げる。

すると、彼の後ろでドアが勢いよく閉められるのが、目に入った。

「な、何を……」

「ねぇ、」

何か言おうとして、でも考えがまとまらず言葉にならない私を遮ったのは、とても、優しい声。

まるで小さな子を相手に話すように、彼は座り込んだままの私に目線を合わせようとしゃがみ込む。

そして、にっこりと微笑んだ。

「あと、何回殺されるのかな」

それは、独り言にも、私に尋ねているようにも聞こえた。

「何回、殺されたのかな」

手に、顔に、ぬめりとした生暖かい何かの感触が触れた。

「夢で殺したところで、何も変わらないんだよ」

何時の間にか、手にはナイフが握られている。

「それで、自己防衛のつもり?」

夢が、フラッシュバックした。

今日の夢。君を殺した。昨日の夢。執拗に刺した。一昨日の夢。顔も知らない誰かを刺した。その前の夢。君にーー

ーー執拗に、何度も……刺された。

何度も何度も。


怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

君を殺せば、殺される事はない。

そう考える。何度も殺す。君は何度でも現れる。また殺す。

また殺す。

「一度殺した。ただそれだけ。その仕返しが百万回の死だなんて、割が会わないでしょ?」

君に押し倒された時に伝わる痛み。逆手に持ち変えられたナイフ。

「だから、これが百万回殺した罰」

抵抗して。でもそれは無駄な事で。

執拗に、刺す。何度も。何度でも。

「じゃあね、××××××××××××」

意識が遠ざかる。彼の声が聞こえない。

目の前が赤い。

目の前が、赤い。


ーーああ、また、こうして、何度こうしても、君は、

そして、夢から覚めた。→←4話



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設定タグ:ホラー , 短編? , 名前変換無し   
作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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雨神朔夜(プロフ) - 蝶々娘さん» コメントありがとうございます…!文章は、今回ホラーと言うことで普段よりホラーらしい描写を…と、試行錯誤しながらの制作だったので、そう仰って頂けると修行中ではあるのですが作者冥利に尽きます!本当にありがとうございます(レス遅れて申し訳ありません) (2015年1月3日 16時) (レス) id: 6bac632556 (このIDを非表示/違反報告)
蝶々娘(プロフ) - ゾクゾクして、不思議で面白かったです!!台本書きのやつよりずっと面白いし、文章力がすごい!久しぶりにこんないい話に出会いました!ありがとうございました! (2014年11月25日 16時) (携帯から) (レス) id: 44ad2f88ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨神朔夜 | 作者ホームページ:http://mypage.syosetu.com/394178/  
作成日時:2014年11月9日 13時

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