完全停止 ページ36
ノロイの腕から離れた幾筋もの青い揺らめきは真っ直ぐ出久に向かって伸び、途中で鋭い氷片となった。
「と、のッ！！」
何も考える間も無く反射神経を駆使して思い切り後ろに飛んで避ける。
ガガッ！！
コンクリートを容赦無く削って氷片がついさっきまで出久の居た場所に突き刺さった。避けていなければ、確実に死んでいただろう。
「轟さん！？」
明確な殺意を持って放たれたノロイの攻撃に審判であるミッドナイトが焦った声をあげる。観客達も様子がおかしい事に気が付き始め若干どよめいていた。
「……−273.15 度、って分かるぅ？」
「え……？」
その事に構わず、ノロイはゆっくりと歩みを進め、欠けたコンクリート片を一つ拾い上げておもむろに出久へと突き出した。
「−273.15度ってねぇ、熱力学的に言う所の気体分子の存在しない最低温度らしぃんだぁ。その時、そこに存在する物体、物質は全て０になる……僕の言ってる事分かるぅ？君は頭がイイからわかるよねぇ」
「何、を？」
何の脈絡も無くつらつらと喋り出したノロイの言葉に体が凍り付いた様に動かなくなる。
ピキ、ピキ……聞いた事の無い音が、微かに聞こえた。
「理論的には−273.15 度は到達不可能な温度だぁ……そもそも分子振動の完全停止は即ち『消失』を意味するぅ」
ピキ、ビキッ。
ノロイの手の中で破片が歪に捻じれて行く。
「Aに英雄はいらないんだぁ！」
そう言って、ノロイはダラリと舌を出して目を細めた。
バ、キン……！！
言葉と共に、破片はノロイの手から、この世界から、完全に消え去った。
「世界から、消えろよヒーロー！」
怪物が嗤う。
絶対零度とは、即ち−273.15 度の事であり理論上では分子振動の完全停止を導く温度であり、気体分子値の０を指し示す。
物体を構成する分子は常に振動し摩擦を引き起こしている。それによって生じる摩擦熱で"熱"を保ち、形として物体を存在させているのだ。
絶対零度は流れる気体は液体となり液体は凍り付き個体となるのだ。
轟Aの個性は青い炎による燃焼と凍結。そして何よりもソレを可能にしている強靭な耐熱、耐寒細胞で作られている肉体。
細胞の一つ一つに微量な炎を浸透させる事によって凝縮された温度は絶対零度の領域にまで達していた。
もはや、轟Aという存在そのものが一つの個性として生きていたのだ。
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ミロリン(プロフ) - 砂羅 零さん» 誤字報告痛み入ります！早速修正させて頂きました、ご丁寧にわざわざご指摘下さり本当にありがとうございます！ (2017年8月16日 19時) (
レス) id: 65625e03e7 (このIDを非表示/違反報告)
砂羅 零 - 拘束が高速になってます。 (2017年8月10日 18時) (レス) id: 7297fcdd76 (このIDを非表示/違反報告)
ミロリン(プロフ) - 柚子さん» とても嬉しいお言葉です！ご声援を励みにこれからも頑張って更新していきますね！コメントありがとうございます！ (2017年5月17日 20時) (レス) id: 65625e03e7 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - 凄く面白かったです！更新頑張ってください！ (2017年4月17日 22時) (レス) id: 4584690b17 (このIDを非表示/違反報告)
ミロリン(プロフ) - ユキさん» ご指摘ありがとうございます！でも、それは一応わざとなんです、ややこしくてすいません！ (2017年4月11日 7時) (レス) id: 65625e03e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミロリン | 作成日時：2015年5月11日 22時
