記憶の果てに【最後の日を共に】 (ページ5)

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八神高校二年春ページ5

颯はおかしい。

俺が最近思うことだ。
雰囲気が変わったというか、諦めが早くなった気がする。
元々熱血タイプではなかったけど、やる気が全然見受けられない。
それでいて成績は上がってるんだから謎だ。

颯はよく、空を眺めている。

あいつは無口ではないが、プライベートなことについてベラベラ喋ったりしない。
けど、空を見ているときはとくに感情が顔に出ていると思う。
懐かしいものを見るような、また、全てを諦めてしまったような、色んな感情が入り混じった複雑な顔をしている。

もう一つおかしなことがある。
「幸せってなんだと思う？」
そんなよくわからない質問をされた。
あいつは抽象的なことはあまり好きじゃなくて、漠然としたものについて興味を示すことは稀だった。

「家畜と、野生の動物ってどっちが幸せなんだろうね。」

なにかのたとえだろうか。
回答に困る質問だったが、冗談ではないと、なんとなく察した。
俺は、尋ねられたときのあの迷子のような途方に暮れた顔を鮮明に覚えている。

「ま、どっちかと言えば野生の動物だろ」

軽すぎず、重すぎずなテンションを意識して返答した。

「だよなぁ」

あいつはしみじみと相槌をうっていた。

「自由だし、明日死ぬとしても知らぬが仏ってやつだろ」

俺がそう言った時の自嘲するような笑みが頭から離れない。

俺は颯の親友だと思っているし、そうであるとも言い切れる。
何かあるなら相談してくればいいのに、と時々ヤキモチする。
その反面、颯が言わないなら放って置いた方がいいのでは？とも思う。

俺には何ができるのだろうか。