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マンションの玄関前で煙草を吸っていたす ばるくん。
一目私を見るなり、眉間の皺が深くなった。
いつもは携帯灰皿にきちんと入れるのに、
足元に落としてグリグリっと揉み消す。
彼の着ていた白いシャツを無言で羽織らされ。
私の手首を掴んで、大通りに向かって歩き出す。
手首から彼の苛立ちが伝わってくるようで。
「あ、の」
「ええから」
来る時はバスだったけれど、
すかさずタクシーを拾う。
お互いにドアの端と端で、
窓の外を眺めて、無言の空間。
タクシーの無線のやり取りと、ラジオと。
それだけが聞こえる車内。
夕方に近づいているけれど、
外はまだまだ明るくて。
その明るさが胸を苦しくさせる。
9月22日────。
そっか、誕生日だったんだ。
後悔だけが押し寄せてきて、
先程までの余韻の残る身体のあちこちが痛む。
一番痛むのは、もちろん心で。
知らなかった自分の愚鈍さと、
あの部屋で起きたこと────す ばるくんに罪悪感しかなくて。
涙が溢れそうになる。
でも、それは自分の罪悪感を拭うためのものでしかないのは明白だし。
こんな状態の私には、彼の誕生日を祝う資格なんてないような気がして。
涙は必死に堪えた。
彼はそもそも、私を許してくれるのだろうか。
ある程度は察しているはず。
ちゃんと別れたことを知らせて、
それが手土産になるはずだったのに。
タクシーが宿泊先の前で止まり、
す ばるくんが精算する。
手を引かれて、エレベーターに乗り込む。
ササッとカードキーを財布から出し、1枚渡される。
「ん」
ほぼ、彼の声を聞かずにここまで帰ってきて。
怒っているのはわかっているのに、
どうしたら許してもらえるのか、
それを考えて彼の横顔を見つめる。
エレベーターが止まるまで、
あっという間なはずなのに、
じりじりと迫る圧迫間を感じていた。
エレベーターから降りて、
部屋番号を確認して、ずんずん進んでいく。
背はさほど大きくないのに、彼の歩幅は大きくて、手を引かれてはいるけど、懸命に早歩きで追いつく。
カードキーをかざすと部屋があいて、
部屋の広さに驚いて息を呑んだ。
ああ、誕生日に一緒に泊まる特別感だったんだな────悟って、また勝手に落ち込んだ。
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まこ(プロフ) - sangozygoさん» 大倉担のさんごさんに喜んで頂けているなら、本望です!手探りのクズ倉くんですが、今後もよろしくお願いいたしますw (2019年1月19日 18時) (レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
sangozygo(プロフ) - わわわーーーーん!!クズ倉くん最高過ぎてたまりません!!!通知来る度に飛んで来て読んでます!! (2019年1月19日 15時) (レス) id: b426f69b31 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - randyeeeeeeeさん» 昨日、下書きの保存を間違ってかなりの時間に1話飛ばしたのを読んで頂いてしまったようだったので、そこ周辺まで一気に更新したんです(^_^; クソ倉くん、かなりクズですが、喜んでいただけてるならばこのまま突き進みますwコメント嬉しいです。ありがとうございます! (2019年1月19日 10時) (レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
randyeeeeeee(プロフ) - 返信いただき嬉しいですー!毎朝の日課になっていて、今日は1話じゃなかったのでご褒美もらった気分ですw!クソ倉くん…しっかりと反省したまえ(笑)と思いながらも乗り越えてー!と応援しちゃっていますw楽しみにしています。更新頑張ってください! (2019年1月19日 8時) (レス) id: a02fcd29a4 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - neko58910さん» ありがとうございます!考え出すと更新が止まりますw嬉しいコメントを頂いて、励みになります。間が空くかもしれないですが、これからも更新していきますので、よろしくお願いします。 (2019年1月19日 0時) (レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まこ | 作成日時:2018年11月5日 18時