87 ページ37
･
side 赤
「人のものをとっちゃいけないってことですよね…」
結論づけるように言い切る明るい声。
「ちゃうやん────。
速水さんは誰のものなん？
とる、とらないやなくて。
────2つ欲しがる方があかん思うわ」
周りのざわめきだけが聞こえる。
うるさいくらいなのに、
速水さんとの間には静寂があって。
静寂を破ったのは、速水さんだった。
「ありがとうございます」
「偉そうなこと言うてもうた」
誤魔化すように目の前のグラスを飲み干す。
「レモンサワーでしたっけ？
追加しましょうか」
「いや、あとからにするわ」
煙草と携帯灰皿持って、立ち上がった。
･
夜だというのに。
まだじっとりと空気は重く、暑く。
店の外で煙草をふかす。
「サトミちゃんとだいぶ仲ようなったん？」
頭上から聞こえる声。
見なくてもわかる、同期の声。
「仕事もできるし、話しやすい子やん」
「そやろ？」
軽口を叩く口から、薄い煙が出ていく。
「あんないい子、どうすんねん」
「別れるだけやん。
かわいいし、すぐ次が現れるて」
「そんなもんなん？
Aみたいに、執着しないん？」
「執着？」
聞き返しながら、面白いものを見つけたようにこちらを見下ろす瞳。
「Aが言うたん？」
足元を見られている。
そうわかるのに、口調は穏やかで。
こちらは悪くないのに、
小さい子を諭すような口調。
悪いこと言うたような気持ちにさせられる。
ああ、Aはこうやって追い詰められてるんやな、って。
肯定も否定もせずに、黙って煙を燻らす。
「す ばるくん、どこまで知っとるん？」
こちらを覗き込む笑顔。
「Aは、そういうんべらべら言うタイプやないし」
「そういうん、ってなんなん…」
小さく呟いたのに、ちゃんと耳に届いて。
「Aが寂しいん慰めてた言うから、てっきり…」
紡がれる言葉に反吐が出そうになる。
「ええ加減にせえよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まこ(プロフ) - sangozygoさん» 大倉担のさんごさんに喜んで頂けているなら、本望です！手探りのクズ倉くんですが、今後もよろしくお願いいたしますw (2019年1月19日 18時) (
レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
sangozygo(プロフ) - わわわーーーーん！！クズ倉くん最高過ぎてたまりません！！！通知来る度に飛んで来て読んでます！！ (2019年1月19日 15時) (レス) id: b426f69b31 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - randyeeeeeeeさん» 昨日、下書きの保存を間違ってかなりの時間に1話飛ばしたのを読んで頂いてしまったようだったので、そこ周辺まで一気に更新したんです(^_^; クソ倉くん、かなりクズですが、喜んでいただけてるならばこのまま突き進みますwコメント嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年1月19日 10時) (レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
randyeeeeeee(プロフ) - 返信いただき嬉しいですー！毎朝の日課になっていて、今日は1話じゃなかったのでご褒美もらった気分ですw！クソ倉くん…しっかりと反省したまえ（笑）と思いながらも乗り越えてー！と応援しちゃっていますw楽しみにしています。更新頑張ってください！ (2019年1月19日 8時) (レス) id: a02fcd29a4 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - neko58910さん» ありがとうございます！考え出すと更新が止まりますw嬉しいコメントを頂いて、励みになります。間が空くかもしれないですが、これからも更新していきますので、よろしくお願いします。 (2019年1月19日 0時) (レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まこ | 作成日時：2018年11月5日 18時
