スプリット・タン ページ21
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※作者は宗教・神話等には詳しくありませんので、自己責任での閲覧をお願い致します。
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蛇はとても賢い生き物、なのに。
彼は楽園でイブを騙した。赤い果実を齧ったイブはアダムと共に、楽園を追放された。
人間が犯 した初めての罪を誘発した蛇に惹かれた蝶々は、幸せだったのだろうか。
____蛇を両腕に這わせたギャングの男と、そんなギャングと恋に落ちた、蝶を右腕て飼う1人の女。
「……ジャッキー」
トッポが捲っていく数枚の紙には、幾つもの文字が並べられている。そしてその全てが、ジャッキーが調べ上げた資料だった。
「ん? なんや」
パラパラと資料を捲るトッポの隣で、ペットボトルのミネラルウォーターを飲んでいるジャッキーが首を傾げた。
「ありがと、調べてくれて」
「ええって、こんな事くらい」
最後のページには、あるギャングの抗争についてが書かれている。そしてその抗争内容の少し前の一文が、全てだった。
「俺、愛されてたんかな?」
蛇と蝶は最期の最後に、授かった小さな命を守ろうとしたのか、否か。
「……トッポ」
ぐしゃり、ジャッキーの手がトッポの髪を撫でていく。資料から視線を上げたトッポの先で笑う、ジャッキー。
「お前はちゃんと、愛されてた。それは確かや……」
ぐしゃりぐしゃり。
雑に、強く。でも優しくてあったかいジャッキーの手。
ポロポロこぼれ落ちていく涙は、トッポが握る資料を濡 らして、文字を滲ませる。
溢れて、止まらない、止められない涙。
「お前が此処で生きてること自体が、愛されてた証拠やったやろ?」
最後のページに書かれているギャング同士の抗争の中で、蛇と蝶は息絶えていた。たったひとつの命を遺して、消えていった。
「うん……」
ぼやける視界、頭の上の温もり、今動いている心臓。その全てが、抗争の前にこどもの家に預けられた事が生んだ奇跡、だなんて、考えたこともなかった。
「なぁジャッキー」
「なんや?」
「俺、しあわせや」
「さよか、なら良かった」
____やっぱり、腕に蛇や蝶を宿す人が苦手だ。蛇と蝶と、別れた子供だったけれど。でもあの人たちはやっぱり、嫌いじゃ無い。
『スプリット・タン』
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未優(プロフ) - 作者さん» お褒めの言葉ありがとうございます* 自分の初期の頃と比べると、我ながら変わったなぁと思います(笑) でもやはり私なんかよりずっとうまい方が沢山いらっしゃるので…奥深い物ですよね(笑) (2015年4月8日 22時) (レス) id: 4ec3ff7e45 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 小説の書き方がすごくお上手ですね!私も小説を書いているのですが、とても勉強になります (2015年4月7日 21時) (レス) id: 6fe600e7be (このIDを非表示/違反報告)
未優(プロフ) - YOUMIさん» 何度も考えがぶれてしまうので、またコロコロと変わるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします! (2015年4月5日 13時) (レス) id: 4ec3ff7e45 (このIDを非表示/違反報告)
未優(プロフ) - ももさん» コメントありがとうございます!こみゅ〜さんがもう使えないのでコメント欄でのやりとりとはなってしまうかと思いますが、それでもよければよろしくお願いします…! (2015年4月5日 13時) (レス) id: 4ec3ff7e45 (このIDを非表示/違反報告)
未優(プロフ) - *じゃっきー*さん» コメントありがとうございます!相変わらず気分屋な作者ですが、どうぞよろしくお願いします(^^) (2015年4月5日 13時) (レス) id: 4ec3ff7e45 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2015年3月11日 21時