遠い、話 ページ34
．
____バタン、と大きな音がした。ハッとマックが振り向くとそこには、人が居た。正確には、既に息が絶えている人が倒れていた。
その顔はうまく見えなかったけれど、それが一体誰なのか、マックには一瞬で分かってしまった。
それなのに。
何故か彼の顔を思い出せない。ただ断片的に、彼の手が懐中時計を握るその一コマだけが、マックの頭に浮かび上がる。
じわりじわりと彼から流れる赤い血から逃げる様に、マックが一歩後ずさりした時だった。
パリンッ……
今度はガラスが割れる音だった。そしてその音の方向には、見慣れたスーツを着る男達の屍。
「ぅあ……」
こぼれた声は情けない位に掠れていて、小さなものだった。
ナイフを巧みに操るあの手。
黒髪に混ざって揺れる煙草の煙。
カウンターに置かれた牛乳パック。
チカチカ光るゲーム機の明かり。
靴紐が結ばれていない汚れた靴。
軽快に音を立てるシェーカー。
顔を思い出すことができない、彼らの欠片だけが頭の中を駆け抜けていく。
「なん、で……」
様々な考えを巡らせても、行き着く先はただひとつ。
もう彼らが笑うことは無い。
ゆっくり進む赤い海がマックの黒い靴に到達し、靴を囲む様に赤が床を侵食していく。
必死に自分の体重を支えていた膝から、ついに力が抜けてその場に崩れ落ちてしまう。ぱしゃ、と小さく水音を立てたのは、マックの膝を濡 らしていく血の海だった。
「あ……」
____もう、誰もいない。
誰かがそばにいてくれる日はもう、来ない。
“強くなれよ？”
そう、あの人の声が聞こえた。
“ゴメン”
誰かが言った。
そして、
「いっつも、俺ばっかり、置いてくんや……」
パリンッ
再び鳴ったガラスが割れる音は、マックの懐中時計が発した音だった。
そして、止まった。
「____……っ！」
目を開ければ、其処にあったのは見慣れた壁。聞こえて来るのは彼らの声。
「ゆ、め……」
ポロリ零れたのは、一粒の涙。
机の上に鎮座する懐中時計は、動いていた。
『遠い、話』
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れな - ありがとうございます！ (2015年3月12日 0時) (
レス) id: 7e221f6965 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - リクエストのお話ありがとうございました。お礼が遅くなりすみません。トッポを心配でするメンバーがよかったです。エースとトッポのコンビが好きなのでいつか、2人のお話もまた読めたら嬉しいです。これからも楽しみにしてます。 (2015年3月11日 22時) (レス) id: 84ad1a8f3e (このIDを非表示/違反報告)
未優(プロフ) - れなさん» リクエストありがとうございます！ひとつ目の方ですが、同様のリクエストを他の方からも頂いているのでそちらと合体させていただきます。ふたつ目の方も書かせていただきますのでよろしくお願い致します！ (2015年3月11日 21時) (レス) id: 4ec3ff7e45 (このIDを非表示/違反報告)
れな - あと、アーセナルが拉致されちゃって、皆で助けにいく的なのがみたいです！ 何度もすみません！ (2015年3月10日 0時) (レス) id: 7e221f6965 (このIDを非表示/違反報告)
れな - リクエストです！ トッポが何かしら無茶をして、怪我をしてしまって、ジャッキーが説教したらトッポが泣いちゃったっていうのがみたいです！笑 それで、ジャッキーが少し焦っちゃう的な笑 よろしくお願いします！ (2015年3月10日 0時) (レス) id: 7e221f6965 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2015年1月31日 22時
