34 ページ34
岩田くんは、目を伏せたままで私の話を黙って聞いていた。
「…ショーの仕事が出来たら、帰国するんだよな？」
「そのつもりよ」
「…わかった」
「待たなくていいから」
「…俺がそんな長い事待てるかどうかわかんね。
だけど、」
そう言って、彼が私の手首を掴んで、引き寄せる。
「ちょっ、」
突然近づく距離に驚いて、辺りをキョロキョロ見回したけど、 急な激しい雨に気を取られて皆が窓の外を見つめていて誰一人私達の方は見ていない。
ホント、抜かりのない男。
「…Aは、忘れないだろ？
もう、身体で覚えたろ。俺の全部」
耳元で囁くと、周りの目を盗んで掠めるように唇にキスをした。
「っちょっと…！」
「あれー？メイクさん？
ここ、ちょっとなんか気になるんですけどー！」
「！！…はい、ど、どこですかね」
クスクスと笑いを堪える岩田くんは、もういつも通りの柔らかな表情で。
私はホッとするのと同時に、自分の決めた別れをすんなり受け入れられた事に寂しさを覚えていた。
「お疲れ様でした！
ありがとうございました！」
岩田くんはその後、あっという間にバンに乗せられて手を振って行ってしまった。
最後にこの手で触れたのは、
彼の少し乾いた唇。
指を自分の唇に当てて目を閉じた。
彼は私の事を忘れるのかも知れない。
それなら、それでいい。
だけど、
私は彼との事を忘れない。
夢を叶えるエネルギーにしていくのだから。
このイタリアで過ごした、彼との3日間を。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 514人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
maki(プロフ) - アンさん» これにて終了です(´∀｀) (2018年1月9日 19時) (
レス) id: d39b30adb2 (このIDを非表示/違反報告)
アン(プロフ) - えっ(°▽°)終わりなん、この後、ムフフなあんな事、こんなポーズやら、なんやらって……wwまきちゃん、素敵なお話お疲れサマでした♪また、いつか素敵なお話待ってまふ (2018年1月6日 14時) (レス) id: f5712a4166 (このIDを非表示/違反報告)
maki(プロフ) - rikoponさん» はじめまして。コメントありがとうございます。大好きな作品だなんて、嬉しくて泣きそうです！ (2017年12月28日 12時) (レス) id: d39b30adb2 (このIDを非表示/違反報告)
maki(プロフ) - アンさん» いつもありがとう。ライビュ満喫してきたよ！ (2017年12月28日 12時) (レス) id: d39b30adb2 (このIDを非表示/違反報告)
rikopon(プロフ) - 初コメです。こんなにストーリーがドンピシャなお話なかなかなくて、すごく大好きな作品です（；＿；）ここ最近ずっと更新楽しみにしてます！突然失礼しました。。 (2017年12月28日 0時) (レス) id: c6dcdeffb9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：maki
| 作成日時：2017年8月23日 15時
