其の漆 ページ8
『嘘か本当かは知らないけど、妖怪達の間ではそう噂されてるわ。それに、神の子っていうのは本当だしね…』
?「神の子って…」
『私の両親、神様なのよ。他の神にそう言われた。父親は天気の神様である
母親の名前を聞いた子狐は目を見開いた
『私の母親は貴方の姉よ…凄い偶然ね』
Aはそう言って目線を下に向けた
『どうせ喰われても直ぐに再生するんだし、こんな"消耗品"みたいな体を喰いたい奴が居るなら好きなだけ喰わせればいいでしょ………貴方も今の話を聞いて…私を喰いたくなった?』
?「は…!?」
?(何だよ…それ…)
子狐はAの言葉に全身の毛が逆立つが、唖然とするしかなかった
『別に良いわよ。貴方には助けて貰ったし、そのお礼だと思えば』
?「ちょっと待ってよ!!君、それ本気で言ってんの!?」
?(そんな何も映さない目で、何もかも捨てようとしないでよ…)
子狐は訴えかけるようにAの肩を掴んで無理矢理目を合わせた
その目は折角綺麗な色をしているのに、光を宿していなかった
『?…本気だけど?』
?(ああ…そうか…この子は本気で捨てるつもりなんだ…自分の事を消耗品だなんて言っちゃうくらいこの子は自分の命を不要だと思ってるんだ…まだこの子、成人もしてない子供でしょ!?この子の周りの人間がそう思い込ませたの…?)
悲しそうに、そして悔しそうに顔を歪める子狐を見てAは子狐の頭を撫でた
『どうしたの…?』
?「君…」
『何か…気に触る事を言っちゃったならごめんね。私は昔から鈍感で直ぐに誰かを不快にさせちゃうから』
?「けど……そんな君の手は暖かいよ」
『!』
子狐の言葉にAは思わず手を離した
?「君は優しくていい子だね…A。そんな所も妹とそっくりだ……」
子狐がAに触れると、Aは怯えるように体を強ばらせた
?「ね、A?俺と一緒に暮らそうよ」
『…え……』
?「ああ…勿論君を喰うつもりはないよ。まあでも…"別な意味"で君を食べたいけどね」
『……っ…』
その言葉と共に舌舐めずりをする子狐を見てAは尋常じゃない程怯えだした
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作者名:帽子神 | 作成日時:2020年6月4日 4時