【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ8)

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◯振り向いてよ７５５ページ8

心を触手に侵されながら、戦術的かつ正確に心臓を狙ってくる。
どしゅっ、と鋭い炎の塊が自分自身を貫こうとして眼前に迫る。
間一髪のところでそれら全てを交わしつつ、心の中でカウントを続けた。

(...18...17)

どれだけ私を殺すために勉強したか、どれだけお姉さんが大切な人だったか.....よく伝わってくる。

(2、...1)

.....でもね。

あからさまにスキを見せてはいけない。できるだけ自然に。
スッ、とネクタイが揺れる。

ど真ん中に穴が開くような衝撃。一瞬呼吸が止まった。口の隙間から血がこぼれ落ちる。
耐えるために噛み締めた口内は、鉄の味がする。

誰か、と視線を生徒達に向けた瞬間。

『＿＿＿ひぃっ.....！』

引き攣った、上擦った悲鳴が目の前から聞こえた。

(.....Aさん...？！)

口元に手を当て、丸くて大きな目が更に大きくなっている。揺れる双眸にはありありと〝恐怖〟という感情が滲み出て、真っ白な頬には赤い線が引かれてある。
茅野さんの攻撃が、当たってしまった...？いやでも私なら気付くはずだ。だとしたら、

「...？ Aちゃん...？」

茅野さんの触手から、力が微かに消える。弱まったほんの一瞬をねらって茅野さんを抑えた。

＊＊＊

「水城さん、水城さん」

こそりと名前を呼ばれた。見れば少し離れたところで潮田君が手招きしているのが見えた。
少し駆け足で近寄る。

『どうしたの？』

潮田君は綺麗な水色の瞳をさ迷わせたあと、嫌だったら断ってね、と前置きをしてから話し始めた。

「あのさ...茅野が殺せんせーの心臓を突いた後、僕が仕掛けたいんだ」

硬い声が続く。

「でも、もしかしたらその後も攻撃を仕掛けるかもしれない」

「だからね、気を引いてほしいんだ」

「次の攻撃に行かないように、ほんの一瞬でいいから...、茅野に、殺せんせーじゃなくて僕達に気を向けさせてほしい。でも、無理はしないで」

私はそれに頷いた。茅野ちゃんを助けたいのは私も同じ。

(わざとらしいけど.....攻撃が当たった事にして、怯えた様に見せればなんとかなるハズ)

傷はどうしようか。周りから離れたところで考える。視界の端で小さな枝が見えた。

(跡ついちゃうかなー...、まあ、これで茅野ちゃんが助かるなら安いもんか)

ちりちり、と脳裏が焼ける。この時私は、物事を冷静に考えられなくなっていた。

(無理はしないでって言われたけど、無理をしてまで助けたいんだよ、私は)