【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ6)

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◯振り向いてよ７５３ページ6

ちりちり、とこめかみ当たりが酷く痛んだ。
ぐっと奥歯を噛み締め、真っ直ぐ前を向けば、鼓膜に突き刺さる声。

「.....言ってる方が今にも死にそうだぜ」

苦虫を噛み潰したような表情で前原はボソリと呟いた。

「.....なんとかなんねーのかよ。茅野が侵食されてくのを見るしか.....！！」

誰もが策を考えようと苦悶の表情で思考を巡らせようとした瞬間、ぱっと笑顔が目の前に咲く。
うおっ！！！と驚きが喉から引きずり出され、次々と皆がツッコミを入れていく。笑顔の正体は言わずもがな殺せんせーである。

「なんで顔だけ！？」

「先生の分身です！」

いつもは陽気で、それでもしっかりと構えている様な、どこか余裕がある様な声が、珍しく今は切羽詰まっていた。
どうやら茅野の猛攻であまりにも余裕がなさすぎて顔だけを伸ばし分身した様だがそちらの方が器用である。

「手伝ってください、一刻も早く茅野さんの触手を抜かなくては！！」

彼女の異常な触手の火力は自身の生存を考えていないからであり、一分もすれば生命力を奪われ、死んでしまう。
無理矢理抜こうとしても、茅野の殺意と触手の殺意が一致している間は触手の「根」が神経に癒着していて離れない。
つまり、イトナの時のように説得する時間すらないのだと鋭い声で説明する。

どうすれば、と生徒の問いに、食い気味に答えた。

「手段はひとつ。戦いながら引き抜きます」

そんな事が出来るのかとAは目を見開いた。
戦いながら、といえども殺意がある状態で引き抜くのは無理がある。
続きを促さずとも殺せんせーは続けた。

「先生は敢えて最大の急所を突かせます」

その一言ですべて分かってしまった。
一瞬でも触手の殺意を薄めさせる為、簡単に言えば自己を犠牲にする。

「君達の誰かがで「茅野さんの殺意」を忘れさせる事をしてください」

「.....殺意を...どうやって？」

「方法は何でもいい。思わず暗殺から考えが逸れる何かです」

これだけは殺せんせーにはできない。殺意の対象からふざけた事をされたところで、殺意が増幅するだけである。
E組の誰かが彼女の殺意を弱めれば、ほんの僅かだが触手の結合が離れ、最小限のダメージで触手が抜けるかもしれないらしい。

(.....かもしれない、でも)

チリチリとやはりこめかみ当たりが酷く痛んだ。

(かもしれないでも、その可能性に賭けるしか)

今はもう、ほかの手を考えている時間はない