【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ44)

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振り向いてよ７８９ページ44

「調子はどう？茅野.....じゃなかった、雪村...さん？」

見舞いの品を傍らに起きながら、僕は入院中の友人に話しかけた。本名で呼んだほうがいいかもしれない、と言い直すと、彼女は笑って茅野でいいよと言う。

「あさって退院か。冬休み丸々潰れちゃったな」
「うん。先生が言うには全治2週間で済んだのが奇跡だって」

苦笑いしながら言った後、茅野の目に申し訳なさそうな色が映る。

「...でも、皆の冬休みだって」

恐る恐る口にしたその言葉で、見舞いに来ていた人達の空気が重くなった。

「ああ...殺そうとか...言い出せる雰囲気じゃなくてな」
「.....」

茅野は目を伏せると、ごめんなさい、とポツリと口に出す。

「私のせいだ。お姉ちゃんの真実が全部わかって、私はやっと心の整理がついたけど、引き換えに皆は.....殺せんせーの過去を知ってしまって」

顔を俯かせたままの茅野に、僕は違うよ、と話しかけた。

「いつか知らなきゃいけなかったんだ」
「クラス皆が...全力で背を向けてきたんです。少しでも長く...楽しい暗殺を続ける為に」

きっと時間の問題だったのだろう。いつかは誰かが疑問に思って、同じ様に考えていかなくちゃいけなくなる。

「たぶん皆、それぞれが冬休みの間に考えてる。これから暗殺教室(このきょうしつ)とどう向き合っていくのか」

僕も、少し考えがあった。

「渚は？」

聞いてきた茅野に、いつも通りの声色で冬休みになったら言ってみる、とだけ伝えた。
それと、茅野に言っておきたいことがあった。
許してくれるかも分からないし、怒っているかもしれない。
本人もあまり掘り出されたくない話題かもだけど、こればかりはきちんと謝っておかなければ。

「あの夜の事、あの時はあの方法しか思いつかなくて。怒ってる...？」

茅野は一瞬目を見開いたけど、次にはぱっと明るい表情でまさかと首を振った。

「助けてくれたんだもん、感謝しか出てこないよ」
「よかった...友達辞めるとか言われたらどうしようかと」
「...気にしすぎ！ずっと普通に友達だってば」

ごろりとベッドに横たわった茅野を見て、神崎さんがそろそろ帰ろうと促した。

「茅野さん、まだ万全じゃなさそうだし」
「あ、うん。じゃあね茅野、また明後日！」
「...うん」

病室から出た後、神崎さんがクスリと笑った。

「どうしたの神崎さん」
「いつも少し遠くでクラスを見てたけど...やっと同じ場所に来てくれた気がして」

僕らは顔を見合わせた。一体何のことだろう。