【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ43)

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振り向いてよ７８８ページ43

暗殺を仕掛けた生徒は一人もいなかったが、連絡をとった生徒が一人だけいる。

...私だ。

重い気持ちで年が明けて、あまりにも暗い顔をしていたのかお母さんに「別れたの？ ...違う？じゃ何、そんな顔されるとこっちまで暗くなるんだけど？」
と言われてしまって、これ以上気を悪くさせない為に外に出た。

あの日から誰とも連絡を取っていない。
カルマ君とも。

スマホを取り出して連絡帳のアイコンに触れる。
一番下、電話番号しか書かれていない欄がある。

お父さんの電話番号だ。かけたら出てくれるかもしれないとか、留守電にかけてるとかで持っている訳じゃなく。
単純に、お父さんがいない連絡帳をつくりたくなかっただけだ。

上にスクロールして、何度かかけたことがある名前をタップする。

数秒待った後、あの日から聞いていなかった声が聞こえた。

「珍しいですねぇ、君がかけてくるなんて」
『久しぶり、殺せんせー』
「君からの電話は嫌な思い出しかないんですが...」
『前みたいに探りの電話じゃないから安心してよ』
「では何の用事ですか？暗殺ですか？」
『違うよ...流石に殺す気分じゃないし』

人通りの少ない道に入って、歩く速度を緩くした。

『皆さ、私みたいに...逃げちゃったりとか、するのかな』

1月の空に浮かぶ三日月を見上げる。
電話越しからは何も聞こえない。

「そうですねぇ、こうなる事を予想していなかった訳ではありません。君は完全に予想外でしたが」
『そりゃすみません。好奇心旺盛なんです』

明るい口調で言ってみても、話している内容が明るくなるわけじゃない。

「ですが...場に応じて柔軟に、やり遂げる覚悟が無ければ...最初から教師になどなってませんよ」
『だよね』
「Aさんは信じてないんですか？皆さんを。以前は信じてるけど信じられないと言ってましたが」
『あ～、それ私がちょっと病んでた時のやつ～』

ちょっと病んでるどころじゃなかったですよと言う殺せんせーに、私は苦笑した。
確かにあの時の私はある意味正常ではなかった。
だからこそ、踏み込んで来ようとする皆が許せなかったし、拒絶してしまう自分も嫌いだった。

『今はね、殺せんせー』

信じてるよ、皆のこと。

「.....良かったです、君がそう言ってくれて。なら大丈夫でしょう」
『うん。ごめんね急に。これが聞きたかっただけなの』
「いえいえ、大丈夫ですよ」
『それじゃ、新学期にね』