【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ28)

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◯振り向いてよ７７５ページ28

×××

.....申し訳ない事をしたと、思っている。
幾ら世界で最も危険な殺し屋であったとしても、こんなモルモットの様な扱いは受けなくてもいいはずだ。
然るべき場所で、然るべき罰を下され、きちんと、その罪を償えるようにするべきなのだ。

どんな人間にだって、更生するチャンスはある。

それを、こんな場所で、手酷い扱いを受けるべきではない。もちろん、もっと酷いことを受けるべきであると考える人もいるだろう。

それでも、俺は申し訳ない事をしたと思う。
綺麗事なのは分かっている。

「.....発見してしまった、俺の責任だな」

喫煙室の壁に背中をあずけ、逃げるように煙草に火をつける。

ポケットに入れていた端末から呼び出し音が鳴った。

「.....はい、水城(・・)です」

×××

実験が進むうち...「死神」の体には明確な変化が起き始めた。
彼の体を循環し始めた反物質エネルギーは、ケタ外れの代謝を可能にし、その強大なパワーを受け止めるため、体組織は強靭で柔軟な物質構成へと置き換わっていった。

6ヶ月目には、外部刺激で腕や指先がムチのようにしなり始め、柳沢は「触手」と呼ぶようになった。

「.....、拘束台の機能強化が必要だな。こいつが自分の力に気付く前に」

流石の柳沢も警戒心を声に乗せて部下に指示を出した。その周りにいる研究員たちの警戒度が明らかに上がっている。

ついには柳沢も独房に近づくことはしなくなって、あぐりは律儀に柳沢の命令を聞き入れる。彼女はもしもの為の生贄だった。

もちろん、あぐりだって馬鹿ではない。自分の立場も、「死神」がどんどんと日を追う事に人ならぬ存在に変わっていくのも感じていながら、余計な事は何も聞かず、何も言わなかった。

いつも通り、穏やかで柔らかい声が死神の鼓膜を揺する。

「お疲れ様でした。少し休んだらバイタルチェックに入ります」

ただまっすぐ死神の方を向いて、人懐っこい笑顔を向けるだけ。

「あとは、いつもみたいにお話しましょ」