【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ26)

今日:22 hit、昨日:1 hit、合計:63,319 hit

◯振り向いてよ７７３ページ26

そんな事ない、と首を振っても、やはり彼らの気持ちは一向に上を向いてはくれなかった。

ーー
ーーー

「うう.....、私の専攻の科学すらかなわない...。私より教師向いてますよ、「死神」さん」

そんな言葉に、死神はふ、と横目であぐりに答える。

「ま.......、仕事上、大学教授にも化けますからね」

ああ、大学教授な死神さんはかっこよさそうだと頭の片隅で思う。

「.....ですが、私に教師は向いていない」

少しだけ影を落とした声が降ってきて、あぐりは首を傾げた。
いつもは余裕と自信に満ちた表情が、目が、少しだけ自身を無くしたような色を乗せたからだ。

「.....、教え子がいたんですが裏切りまして。そのせいで私はここにいるんですが」

ぱちりと目を見張った。完璧に見えた死神も、意外と抜けていたのかもしれない。

「わからないものです。ほぼ完璧に能力を伸ばし、ほぼ完璧に管理してきたつもりですが」

落とした声のまま告げた死神を、真っ直ぐな目であぐりは覗き込んだ。
その目がすこし、ほんの少しだけ死神は苦手に感じていた。まるで自分も知らないような心の底まで見透かされそうな気がして、なんとも居心地悪い。

暫く沈黙したあぐりは、その沈黙を混ぜるように口を開く。

「多分その生徒は...見て欲しかっただけなんですよ、あなたに」

今度は死神が首を傾げる番だった。口元に手を当て、思考の海にどぼんと身を投げてしまう。

「...........？」

ちゃんと見てたんですがねぇ、と思考の底から声が出てくる。そのまま独り言の様に音を落とし続けた。

そんな死神を、あぐりは穏やかな顔で見ていた。