【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ17)

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●振り向いてよ７６４ページ17

それは彼の天職だった＿＿。
力が強い者は知識で殺す、頭がいい者は力と技で殺す、両方とも強い者は人間的魅力で籠絡する。

結果、彼は無敵だった。

どんな難しい以来も引き受けた。
絶対不可能と思えるような厳重な警備をかいくぐって……超大国の大統領を「自然死」させた。
幹部将校を2ダース殺して……十年続いた内戦をたった一週間で終結させた。

数えて千人を殺す頃には「死神」が彼を飾る通り名になっていた。

「……ま、そんな殺し屋もこうなってはざまあないな」

死神が捕えられた部屋を監視する男が低い声で呟いた。その声は心無しか弾んでいて、一緒に監視していた部下が心配そうに尋ねる。

「…しかし柳沢主任、あんな危険人物を使ってもいいんでしょうか？」

「だからこそだ。リストから俺がこいつを指名したんだ」

"柳沢主任"と呼ばれた男は笑いを含んだ声で答える。そこにいたのは若き時の柳沢……後のシロだった。

「明晰な頭脳に強靭な肉体。戸籍もないから死んでも文句は言われない…今回の実験の素材としてはうってつけさ」

……そして今「死神」は国を越えた非公式の研究組織のもとにいた。
全身を拘束していた枷が外れ、ゆっくりと手を開いたり閉じたりを繰り返す。

「血管の保護のために外してやるが…実験の時はその拘束台に自分から乗ってもらう。それに乗ればあらゆる動きは完璧に封じられる。たとえこれからお前の体がどう変化したとしてもな」

部屋に設置されたスピーカーから柳沢の声が響く。
死神はスピーカーにカメラもついているのだろうと推測し、そちらを向いて皮肉げに笑いを零す。

「クスッ…自分から乗らなかったら？」

「ガスに電流、高温低温、音波や光…その部屋には言う事を聞かすあらゆる苦痛がそろっている。拒否権はないんだよモルモット君」

ぷつり、とスピーカーの切れる音がしてゆっくりと立ち上がる。
真っ白で自分の乗っていた拘束台の他には何も無い部屋。
壁にもたれてふと目を閉じればここに来るまでの事が脳裏をよぎった。