【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ16)

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◯振り向いてよ７６３ページ16

「ずい分拘束がきついですね」

穏やかな声、柔らかい笑顔。きつい拘束台に乗せられているのが最も似合わない表情。

「大丈夫。こんな事をしなくても.....私は貴方に危害など加えませんよ」

物腰の良い、育ちの良さそうな言葉に、俺は少々戸惑って声を転がした。

「え、ま、まあ、念の為.....」

「おい話すな！！こいつは洗脳技術も持ってるらしい」

そんな情けない俺に、もう1人共にいた男が鋭く声を上げる。

「実験室に運び込むまで...常に殺られる危険があると思え！！」

一面白で統一された、悪趣味としか形容できない実験室まで運び込むと、俺達は警戒をあらわにしたまま足早に去っていく。

その間際、ちらりと後ろを振り返った。
男は相変わらず柔らかい表情のまま。

その笑顔は誰より優しく、その言葉は聞くもの誰をも安心させる。
まさか誰もこの男が...数千人を殺した殺し屋だとは思わない。

まさにその通りだと実験室を出ていきながら思う。
しかし、数千人を殺した罰にしては軽すぎるとも思ってしまうし、それと同時に気の毒にとも思う。

そんな思考に陥っている時点で、俺は駄目なのだろうなと頭の片隅で考えた。

＊＊＊

去っていく研究員達を横目に見ながら、にこりと笑を零した。

「殺しませんよ。その価値が君等にあれば別ですが」

彼は「死」だけを信じて育った。
劣悪な環境のスラムに生まれ、信用できるものは誰もいない。親は子を売り、友も女も平気で裏切る。

「正義」とは汚職者達がかざすモノ。
「薬」とは廃人を作るためのモノ。
そして「人間」とは.....ゴミのように死ぬために生まれたモノ。

何も信じず育った彼が唯一.....子供の頃から信頼できた真実は、「殺せば人は死ぬ」

だから彼は殺し屋になる道を選んだ。