【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ14)

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◯振り向いてよ７６１ページ14

『茅野ちゃん、良かった。目覚ましたんだね』

カルマと再びE組に合流すると、Aは茅野に駆け寄った。

「茅野...平気？」

まだ汗は引いていないし、全体的に疲労が見えるが、意識ははっきりしている。渚に声をかけられ、少し恥ずかしげにそっぽを向いた。

「...茅野っち...」

「最初は、純粋な殺意だった」

暫くどこか遠くを見つめるような目をした後、ふと口を開いた。

「けど、殺せんせーと過ごすうちに、殺意に確信が持てなくなっていった」

迷う様な口調でも、怒りを含んだ口調でもなく、淡々と事実だけを言葉に乗せる。

「この先生には私の知らない別の事情があるんじゃないか、殺す前に確かめるべきなんじゃないかって。でもその頃には...触手に宿った殺意が膨れ上がって、思いとどまることを許さなかった」

最後に自分自身を小馬鹿にする様な声色に変わる。

「.....バカだよね。皆が純粋に暗殺を楽しんでたのに、私だけ1年間、ただの復讐に費やしちゃった」

目を伏せたままそう言い切ると、少しだけ周りに沈黙が落ちた。

「茅野」

その沈黙に明るい声が割って入る。

「茅野にこの髪型を教えてもらってからさ、僕は自分の長い髪を気にしなくて済むようになった」

明るい口調は、自然と周りの空気を柔らかくする。

「茅野も言ってたけど、殺せんせーって名前。皆が気に入って1年間使ってきた。目的が何だったとかどうでもいい。茅野は、このクラスを一緒に作り上げてきた仲間なんだ」

真っ直ぐに茅野を見て、真っ直ぐな言葉だけを紡ぎ続ける。

「どんなに1人で苦しんでたとしても、全部演技だったなんて言わせないよ。皆と笑った沢山の日が」

「殺せんせーは皆揃ったら全部話すって約束した。先生だって聖人じゃない、良い事ばかりしてないのは皆知ってる。でも、聞こうよ。皆で一緒に」

真っ直ぐな気持ちは、1番人に届きやすいのだと、Aは１番知っていた。

(.....ろくに助けられなかった私じゃ、絶対できなかった事だな)

泣きながらありがとうと告げる茅野を見ながら、そう思う。

「...殺せんせー、茅野は、ここまでして先生の命を狙いました。並大抵の覚悟や決意じゃできない暗殺だった」

磯貝の言葉に、その場の空気が真剣なものに変わる。
微かに風が吹き、全員の髪を揺らした。

(殺せんせー)

唯一このクラスで真実を知っている彼女は、ぐっと詰まりそうな表情で殺せんせーを見る。

「話して下さい。どんな過去でも...真実なら俺等は受け入れます」