【暗殺教室】彼はなかなか振り向いてくれない１６【赤羽業】 (ページ11)

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●振り向いてよ７５８ページ11

「……分かってる」

カルマ君の声はいつもより低かった。近くでいたからわかる。彼の目に映っていた感情、それは。

＿＿＿怒り、そして恐怖と不安だ。

何となく分かる気がする。
茅野が自分の命を犠牲にしようとしていると分かった時に僕も感じた感情だったから。

(多分カルマ君は……)

大切な人が傷つく恐怖に囚われているんだ。

「殺せんせー！！？」

焦った声と何かを吐くような音が聞こえて現実へと思考を戻す。
少し急所を外したとはいえ心臓を刺された事には変わりなく、心臓の修復に時間がかかっていた。

「先生から聞きたい事があるでしょうが…もう少しだけ待ってください」

辺りが静寂に包まれた時、突然銃声が響き、殺せんせーが弾丸を躱す。

「瀕死アピールも大概にしろ、まだ躱す余裕があるじゃないか。使えない娘だ。自分の命と引き換えの復讐劇なら…もう少しいい所まで観れるかと思ったがね」

「シロ…！！」

少し離れた丘の上に白装束に包まれたシロと、顔まで黒いジャージに覆われた不気味な男だった。

「あれ程のものなら、あの子の執念をお前に向けさせた方がよほどマシだったかもな」

「あの子……？」

「おや、この場にいないみたいだな。分かるだろ？大切な人を殺される恐怖にずーっと囚われている」

＿＿＿哀れなあの娘だよ。

何でだろうか。
その言葉が指している人なんて漠然としすぎて分からないはずなのに、僕はそのシロの指している娘が水城さんだと分かった。

「…あの娘もあの娘なら、父親も父親だな」

＿＿＿黙って研究に協力していれば殺されることも無かったのにな。

呟かれたそれに自分の意志に関係なく目が見開いていくのが分かる。
勢いよく振り向くが後ろにいる皆には聞こえていなかった。

「大した怪物だよ。いったい1年で何人の暗殺者を退けてきただろうか。だが…ここに2人ほど残っている。最後は俺だ。全て奪ったお前に対し…命をもって償わせよう」

呟かれたそれを無視して続けたシロは、顔を覆っていた覆面が取られた。左目は失われているのだろうか、何か機械がはめられている。
シロは不吉な言葉を残しながら2代目と呼ばれた男と立ち去っていった。

(殺されたってどういう事だ……？でも、水城さんは事故だって……)

頭の中がぐるぐるとまわる。
混乱と困惑でまともに考えることが出来なくなった。