4話 ページ4
「ねぇ、浅野くん」
「なんだ」
いつもと違って沈んだ声で話しかけたのに、浅野くんは何一つ変わらない声で返してきた。
つれない態度は元からだ。仕方ないと割り切る事にする。
「失恋しちゃった...」
あの時の痛みを思い出して机に伏した私を、気配だけだけど彼は驚いている様だった。
だってほら、顔を上げれば本を捲る手が止まってる。
「...まずお前に好きな人がいたのか」
「えっそこから?」
「ああ」
「話してなかったっけ」
「話された覚えがないな」
浅野くんが驚いたのはほんの一瞬で、すぐに文章を追うことに集中してしまう。
別に、真面目に聞かれても困るから勝手に吐き出すことにする。
「彼に釣り合うようにって頑張ったんだけど、やっぱり無理だった...何考えてるのかさっぱり分かんなくて、間違えた選択肢ばかり選んじゃってさ」
ゆるゆると降下する気分に合わせてまた顔を伏せる。
「好感度どんどん下がっていっちゃって...」
「好感度...? おい待てそれって」
「課金までしたのに...!」
「ゲームの話かよ」
「ゲームでも私は本気で好きだったの!」
「うわぁ」
「そんな虫を見るような目で見なくても」
失恋した乙女にその態度はなんだと抗議すれば、2次元の男すら落とせないのかと言われてグサリと刺さった。
「酷い...」
「それで、お前を振ったのはどんな男だ?」
「バイト先が同じ斎藤先輩23歳」
「歳上か」
「の先輩の友達の弟」
「いや誰だよ遠いな」
「佐野悠太君14歳です」
「歳下かよ。どんな接点が」
「食パンダッシュしてたら曲がり角でぶつかって」
「斎藤先輩関係なくなってんだろ最初の説明いるか?」
「斎藤先輩と佐野君は実は生き別れた兄弟なんだよ」
「そのゲームの設定大丈夫か泥沼だけど」
課金までする価値あるのかと言われてしまった。めっちゃある。
「どうして佐野君を好きになったんだ?」
そう聞かれて、私は佐野君の顔を思い浮かべた。
ちらりと浅野くんを見れば、本じゃなくて私を見ている。
「......顔かな」
ちょっと浅野くんに似てたんだよね。
298人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「暗殺教室」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にゃは(プロフ) - 尊すぎて涙出てきたどうしよう (3月17日 1時) (レス) @page22 id: d295fcb7a5 (このIDを非表示/違反報告)
sirousagi(プロフ) - 最近は成績優秀、運動神経抜群、容姿端麗とか、完璧超人設定が多くて…。これはそんな設定も書かれてないし、自分の想像で読めるから本当いあ!!こんな作品探してたんです!!ドンピシャで本当いい作品だった!! (2022年3月28日 3時) (レス) @page22 id: 53c96774ab (このIDを非表示/違反報告)
キングミカン(プロフ) - 最高な小説でした。浅野くんの夢小説の中でも群を抜いて大好きな作品です。素晴らしい作品をありがとうございます!ごちそうさまでした! (2021年3月2日 21時) (レス) id: 96f79cb953 (このIDを非表示/違反報告)
天泣tenkyu!(プロフ) - とてもキュンキュンしました〜素敵な作品をありがとうございます! (2019年8月12日 22時) (レス) id: 496fdd910e (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - とても面白かったです!浅野くんかっこよすぎです… (2019年3月5日 20時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ