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2話 ページ2

図書室のカウンターを覗くと、返却箱に数十冊程の本が重なっていた。担当日の図書委員が棚に戻す事になっているのに、何故か溜まっている。

他の担当サボりやがった。私の仕事が増えたと舌打ちする。
持てるだけ持った本を1冊1冊元あった場所に戻していく。
残りもあと少しになった所で、下校時間5分前を告げるチャイムが人の居なくなった図書室に降ってきた。
外を見ると夏だというのに薄暗い。当たり前か。完全下校時刻は6時40分だ。

少し慌てるけど、本は今日中に戻さないと次借りる人が困るかもしれないから、全て戻してから帰ろう。職員室に鍵を戻す時の言い訳もそれでいい筈だ。
手に持っている本を棚に戻しながらそう考える。

ガラリと図書室の扉が開く音がして、驚いて音のした方を向く。

「お前、こんな時間まで何やってるんだ?!」
「浅野くんか」

浅野くんが珍しく大声で私に問いかける。
図書室では静かにねと言うと、答えろと強く言われて仕方がなく答えたら、呆れたと眉間に皺を寄せた。

「明日にすればいいだろう」
「もし明日この中の本を借りる人が出たら困るでしょ」
「......他の担当は?」
「サボった。だからシワ寄せがこっちに来たの」
「図書委員は2人1組の筈だ」
「さぁ。今日は図書室に来てないよ」

淡々と答えれば、浅野くんは長く溜息を吐いて、返却箱に残っていた本すべてを持って再びこちらに向かってくる。

「これで全部だな?」
「うん」
「分かった」

短く頷くと、浅野くんは私より遥かに早いスピードで本を片してしまう。
ぽかんとその姿を見ていると、全て片付けた浅野くんが私の分の鞄まで持ってきて、行くぞと声をかける。

「え、え? ありがとう...?」
「あぁ。早く帰るぞ」
「でも鍵...」
「僕が返すから先に下駄箱まで行け」
「1人で大丈夫だよ」
「こんな時間で1人で大丈夫な訳あるか。さっさと行って待ってろ」

下駄箱がある方を指さされて、私は素直に向かった。暗くなった7月の気温は少し涼しく感じる。これから蒸し暑くなるんだろうなぁと考えていたら、早足で浅野くんが靴を履き替えた状態で私のところまで来る。

「送る」

それだけ言うと浅野くんは私の手首を掴んで歩いてしまう。1人で大丈夫だと何度も言ったけど全て無視されてしまって、結局私は家までの道を教えていた。

手首を掴む手は、態度とは裏腹にとても優しかった。

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にゃは(プロフ) - 尊すぎて涙出てきたどうしよう (3月17日 1時) (レス) @page22 id: d295fcb7a5 (このIDを非表示/違反報告)
sirousagi(プロフ) - 最近は成績優秀、運動神経抜群、容姿端麗とか、完璧超人設定が多くて…。これはそんな設定も書かれてないし、自分の想像で読めるから本当いあ!!こんな作品探してたんです!!ドンピシャで本当いい作品だった!! (2022年3月28日 3時) (レス) @page22 id: 53c96774ab (このIDを非表示/違反報告)
キングミカン(プロフ) - 最高な小説でした。浅野くんの夢小説の中でも群を抜いて大好きな作品です。素晴らしい作品をありがとうございます!ごちそうさまでした! (2021年3月2日 21時) (レス) id: 96f79cb953 (このIDを非表示/違反報告)
天泣tenkyu!(プロフ) - とてもキュンキュンしました〜素敵な作品をありがとうございます! (2019年8月12日 22時) (レス) id: 496fdd910e (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - とても面白かったです!浅野くんかっこよすぎです… (2019年3月5日 20時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まっきーぺん | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年3月24日 16時

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