押しに弱くて良かった。 ページ28
｢あのさ｣
｢？はい｣
ふとサワムラ先輩が言葉を区切って、改めて繋ぎ直す。不思議に思って先輩の方を見れば、真っ直ぐな眼差しと目が合って、思わず心臓が跳ねた。
｢十河さん、ウチに入部するのかなって｣
その言葉にまた心臓が跳ねる。そう言えば、他のみんなは色々勧誘してきたけど、サワムラ先輩だけは言ってこなかった。今日言ってきたのは、明日が仮入部最終日で、本入部届けの提出期限だからだろう。
｢あ、えっと｣
自分の頭の中で一日中嫌ってほど考えて、出た答えはひとつだけ。でもそれが上手く言葉に出来なくて、詰まった。先輩はそんな私の姿を見て困ったように笑う。
｢......十河さん押しに弱いから、日向に強制的に仮入部させられてたし、どうなんだろうって思っててね｣
やっぱり、そう思うのが普通だよね。私全然自分の意見をはっきり言うタイプじゃないし、事実この仮入部も押し負けてした様なものだ。
…でも。
｢本当に嫌だったら、…私仮入部来ませんし、それに、その、……強制的でもなんでも、仮入部するって決めたの、自分なので。えっと、あと、楽しいので、部活｣
バレー部の皆は、私の上手くない話をちゃんと拾って繋げてくれる。あの体育館の中の熱気は、私までわくわくするくらい、彼らのバレーは見ていて楽しい。
だから、皆が全国の舞台でバレーをする姿を、直接この目で見れたら、それを支えられるぐらいの立場に居られたら。
＿＿＿＿きっと、これ以上ないくらい嬉しいし、楽しいんだろうなと思った。
｢先輩たちのバレーしてる姿、全国出みたいですし、皆のバレー、好きなので。……近くで応援したいです｣
多分、前までの私なら絶対ありえないってなるんだろうな。本当、今だけはこの性格に感謝。
｢押しに弱くて良かったなって、思います｣
じゃなきゃ、あの日体育館で先輩を見つけられなかったし、好きにもなれなかったし、バレー部に入ろうなんて考えもしなかっただろうから。
｢だからその、……よろしくお願いします、これから｣
拙い私の言葉を黙って聞いていた先輩は、私が最後にそう言って頭を下げた瞬間、嬉しそうに｢っよっしゃ｣と声を上げた。
｢本当に？めっちゃ嬉しい｣
｢え、あ、はい｣
頷けば、サワムラ先輩が本当に嬉しそうに目を細めて笑う。……この笑顔も初めて見るから、思わずキュンキュンしてしまった。ずるい。
｢あいつらも喜ぶよ｣
｢ですかね、なら良かったです｣
まぁ1番喜んでるのは大地だろ？と三年セッターの揶揄う声が聞こえた気がする。
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ちんすこう - 更新しないんですか？凄く楽しみ待ってます。数ある大地さんのお話の中で一番好きです！ (2020年5月12日 10時) (
レス) id: 9e27674b7b (このIDを非表示/違反報告)
奏(プロフ) - 草さん» 返信遅れてしまって申し訳ありません。そうなんですね･･･！知識不足でした、ありがとうございます。大地さん大好きなので我慢出来ずに書いちゃいました。読みやすいと言っていただけて安心しました。妬いちゃう大地さん難しかったので萌えて頂けてなによりです。 (2019年11月5日 21時) (レス) id: 3e7d8a8bee (このIDを非表示/違反報告)
草(プロフ) - 早生まれは1/1から4/1で、遅生まれが4/2から12/31なので三月生まれの夢主は遅生まれではなく早生まれですね。大地さん夢珍しい上に文が読みやすいです。妬くところ大地さん普通の高校生で萌えました。 (2019年11月2日 23時) (レス) id: 59c85b2532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奏 | 作成日時：2019年9月8日 20時
