・ ページ38
えぇ…、私は悪くないのに。
だけど、さっきのがゆきくんの照れ隠しなのは分かってるから、もっと愛おしく思える。
「それに、髪の毛ボサボサだろうと大して変わんないから、大丈夫。」
「えっ、それはそれでひどい。」
「お嬢ちゃん、輝幸は髪がボサボサな君でも可愛いって言ってるんだよ。」
「そんなこと言ってませんよ。勝手に意訳しないでください。」
「でも、さっきのが本音だろ？」
「…。」
すごいな、店主さん。
ゆきくんの扱い方にめっちゃ慣れてる。私の方が付き合い長いのにな、って悔しくなるくらい。
「俺、ちょっとトイレ行ってきます。…Aに、余計なこと言わないでくださいね？」
「それはどうかなー。」
「Aも。その人の適当な言葉を真に受けるなよ。」
「ふふっ、うん。」
あぁ、ダメだ。
愛おしさが勝手に込み上げてくる。
「お嬢ちゃん、苗字は？」
「上川です。」
「じゃあ、上川さん、で呼ぶな。下の名前でも良いんだけど、輝幸に怒られちゃうだろうからな。」
「そうですかね？」
「アイツは嘘つけない性格だからなー。言葉にはしなくても、表情で訴えてくるだろうな。」
…ゆきくんのこと、よく分かってるんだな。
一体、どれくらいの頻度で、どのくらいの間、ゆきくんはここに通っていたのだろう。
「上川さんは知ってる？アイツが一番優しい顔を…良い顔するときは、大抵上川さんの話をしてる時か、さっきみたいに上川さんの隣にいる時だ。」
「…そう、ですかね。だとしたら嬉しいですけど…。」
そういえば、そういうこと、前も言われたなぁ。…本当なら、嬉しい。
「一番最初に輝幸と話した時は、無愛想なヤツだなぁと思ったけど…今となっては、普通の大学生なんだよなー。角が取れたというか。」
「あぁ…ゆきくん、結構無口でしたもんね。」
「そうそう。無口というか、近寄り難い感じだったからなぁ。こっちは仕事だし、関わらざるを得ないけどな。」
ははは、と店主さんはまたも豪快に笑う。
さっきから豪快に笑う様子が多々見れるのに、料理はとても繊細で優しい味がするから不思議だ。
「ゆきくんって、どのくらいの頻度でここに来てたんですか？」
「そうだな、月に、二三回ってとこかな。」
へぇ…結構常連？
それくらい気に入ってるんだな。なんて思っていると、ゆきくんが戻ってきた。
「何話してたんですか？」
「いや？特には。ね、上川さん。」
「はい。」
「…ふーん。あ、A、食い終わった？」
「うん。美味しかったー。」
「それは良かった。また来てね。」
「はい。ゆきくんと一緒に。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イルジオ(プロフ) - 読ませて頂きました！「イルジオの感想置き場」という小説に、感想を書かせて頂きました。見てくださると嬉しいです。それと、お気に入りと高評価をさせて頂きました！ (2020年6月22日 17時) (
レス) id: 40356dc556 (このIDを非表示/違反報告)
Aoi(プロフ) - あいく-Qさん» コメントありがとうございます…！これから学校の方が忙しくなってくるので、せめて週末にでも投稿出来たら良いなと思います…！ (2020年6月5日 15時) (レス) id: 1af304484f (このIDを非表示/違反報告)
あいく-Q - 続編おめでとうございます！これからも楽しみにしています♪ (2020年6月5日 11時) (レス) id: a3a0d25048 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Aoi | 作成日時：2020年6月2日 21時
