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えくぼの君… -ryoya.K- ページ35

目を逸らさないで、

俺だけを見ててよ。

ーーー


「今日はどうかしたん?」

『何が?』

「何が楽しい事でもあった?」

『何もないよ。それよりさ、』




また話題を変えようとするA。

俺が一番知りたい事。

また、そうやって今日も話を逸らすんやな。

よく晴れた金曜日。

Aの心は、今日の空の様に明るい。

悲しい時だって笑って、泣き方を忘れたみたいに、

Aを見ていると誰より強くなろうと、そう思えた。




Aの隠してる好きな奴が、Aの笑顔を増やせてんの?

俺はAの作り笑い、偽りの笑顔それしか最近見た事ないんやけど…

タクシーから降りるAを見た。

俺の知らん誰かの後ろ姿と一緒に。

痛む様な胸のざわめき、こんな気持ちが俺にもあったなんて…

電話する言い訳はもうそろそろ尽きてくる頃よな?

夜中でも、朝早くでも、Aに何かあったらすぐ話し掛けて、

笑わせてる俺は一体何?

この手をいつまでも伸ばしてみたくなる。

いつかまた、こっちを向いてくれるまで…

俺の笑顔をいつも作ってくれんのはAやなのに、

今は上手く笑えんくなってきた。

それはお互い様か。

なら、




「A?」

『ん?』

「もう俺に無理に笑わんでえぇよ。」

『え?何で?普通に楽しいから笑ってんだよ?』




"変な陵矢。笑"って、笑っては見せてるけど、

ほらっ、上手く笑えてない。

この笑顔は、俺が好きなAの笑顔じゃない。




「…俺ら別れよっか?」




まさか俺の口からその言葉が出るなんて、

俺自身も驚いてるけど、もう苦しませたくない。

俺が好きになったAの笑顔は、

小さい子供が見せるみたいに、小さなえくぼが見えるとこ。

今もほらっ、やっぱりえくぼが見えへん。

そんな笑顔を覚えさせたのはきっと俺。

だから自由に笑ってやらせたいと思う俺の最後の償い。

本当は辛いけど、離したくはないけど…




Aありがとう。




またどっかでバッタリ偶然に会った時、

えくぼが見える笑顔であって欲しいと願う。




バイバイA。




バイバイ…

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作者名:haru | 作成日時:2020年12月22日 0時

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