teddy bear (ページ28)

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weed ① -haruki.N- ページ28

薄汚れたこの街で、
遥輝と出会った。

ーーー

一度見たら忘れられない瞳だと思った。

ここに来ると何故かホッとする。
煌びやかなネオンが建ち並ぶ喧騒の街。
ここは騒がしくて、例えば誰かが泣いてたって、
生き倒れてたって、誰もそんなの気にしない。

哀しい街。

初めて行った、あの夜の街で、
騒がしくバカ笑いを振りまいてる男性とぶつかった。

ただ、それだけなのに、歩いてればよくある事なのに、
何故か珍しく気になって振り返った。

「あ!」
『え?』

そう言いながら私の前まで歩いて来た。
よく見れば、ルイ・ヴィトンのリュックと、
触れたら柔そうな金色のサラサラな髪と、
さっきから私の顔を大きくて綺麗な瞳が覗き込んで来る。

「やっぱり!前も俺とぶつかったで?笑」
『…人にぶつかんないで外歩いたことない。』
「へー、お前おもろいな。笑名前聞いてい?」
『名無しの権兵衛。』
「ふっ。ふーん。名無しの権兵衛ねぇ。笑」

"彼氏とかいたりすんの？
いや、可愛いからおるかー笑"

何がそんにおかしいの？笑える要素なんてなかったはず。

なのに、彼は満面の笑顔でまた覗き込んで来る。

近い。

「家どこ?今、一人?」
『…だったら?』
「俺と遊ばん?女の子一人で歩いてると危ないで?」

いんだよ、どうなっても。
仕事も上手くいかなくて、付き合ってた彼氏にも振られて、
親すら私を捨てた。

そんな私に行くとこも帰る場所もない。

「…じゃあ、ヤラれてきたら?

さっきから素通りして行く奴等みんなお前見てたし。

"ヤって"って頼めばヤってくれるんちゃう?

けど、後で泣きを見んのはお前やで?

そうなりたくないんやったらさっさと帰れ!」

少し苛立った口調で、機嫌悪そうな顔をして彼はまたすぐに、
ネオン街へと歩いて行った。

一度も後ろを振り返らず…

私も最初の出会いだけだったら、ただの"調子いい奴"で、
終わってた。

本当の事を本人に真っ直ぐに言う人。
その代わり陰で言ったり、躊躇ったりしない。

自分のやろうとしてる事が、
凄く不自然で、宙ぶらりんて事…

最初に気付かされたのは、
"あいつ"だった。