19 欲張り ページ20
side 桃
「俺はお前に、同情なんかしてへん」
流星は、おれの目をしっかり見て言った。
「同情なんかするわけない」
まるで念を押すみたいに、濱ちゃんの腕をまだ掴んだままのおれの腕を、掴んだ流星の手に力が籠った。
「俺は、お前が」
流星が、彫刻のように整った赤い唇を開く。
数珠繋ぎのように絡んだ三人は、濱ちゃんがおれの手を事務的に離させて、繋がった人数が減った。
「・・・心配なだけや、」
流星がいい終える前に
右目からぼろっと涙がこぼれた。
とうさんとのこと、知られた時から。
流星のこと好きって、自覚した時から。
流星に嫌われることだけが
急に怖くなった。
流星の顔思い浮かべる度に
その口からいつ、おれへの蔑みや、
嫌悪や、憐れみや
同情の言葉が吐き出されるかと思うと
どうしようもないほど、怖くて。
流星を避けた。
濱ちゃんは、おれに
良かったな、って言ってくれてるような
優しい笑顔を見せて廊下に遠くなっていく足音を響かせた。
二人以外には誰も居なくなった、
すこし湿っぽい空間で、
授業中のどこかの教室から
先生の声と、チョークが黒板に擦れる音。
流星の目を見ることなんてとてもできないけど
あほみたいに流れる涙を止めることもできないけど
おれがずっと怖がっとったことは
現実にはならなかったんや。
流星はおれを嫌わなかった。
同情したり蔑んだりしなかった。
それどころか、
助けて、ってお願いしたら
もしかしたら流星は
おれを助けてくれるかもしれない。
おれはそれを期待して
あの日流星にすべてを伝えたのかもしれない。
流星がいつまでも優しいから
おれはどんどん欲張りになってまう。
「・・・・りゅ、せ」
「・・・何」
「・・おれも、嫌ってなん・・・か、
なっ、・・ない」
気のせいか、
おれを掴んだままの流星の手が震えた。
同情じゃない。
・・・・同情、やなかったら、何？
友情？
本当に？
「・・・さ
避けとって、・・
ごめん、なさい」
そんな、夢みたいなもの、
そんなもの、おれ、知らんから。
流星に会うまで知らんかったから。
流星。
流星に会うまでのおれは、一体
何を支えに生きてこれたのか、わからない。
──────
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まいん(プロフ) - Noさん» ありがとうございます。わざわざコメントまで書いていただいて恐縮です。すみません。そんなふうに言っていただけてこちらこそ本当に嬉しいです。ありがとうございます。 (2021年4月30日 22時) (
レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - かこさん» Oh…ありがとうございます(泣)こちらこそ早速ご覧いただき本当にありがとうございます。お待たせしてすみませんでした。 (2021年4月30日 22時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
No(プロフ) - ずっと待ってました>_<本当に嬉しい限りです。 (2021年4月30日 18時) (レス) id: a928634097 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - まいんさん» ずっと待ってました（ ; ; ）更新してくださって本当にありがとうございます！ (2021年4月30日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - 名無しさん» お恥ずかしいです。もったいないご感想で恐縮です。そして嬉しいです。私の小説に対してなのか不安になってしまうほどです。何かの間違いでなければ、本当にありがとうございます。 (2021年4月30日 11時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まいん | 作成日時：2019年9月6日 19時
