12 おれは優しくない ページ13
side 赤
───言うたらあかんやつや。
流星の男前なおんぶの余韻からやっと醒めてきた時。
今一番会いたないん誰ですか、聞かれたら即答する人の声でまた体が変に熱くなった。
流星身代わりにして自分は情けなく布団にくるまって。
二人の会話の内容、聞こえんようにしてもどうしても、耳が言葉を拾ってしまう。
先輩、言うかなあ、って気になって。
おれと先輩が別れた理由。
でも結局先輩は言わへんかった。
考えてみれば先輩が言うはずなかった。
流星に嫌な思いさせてまうもんな。
最後まで先輩は、優しい先輩のまま。
だから俺も、これは言うたらあかんのや。
先輩を見送って、おれに文句の一つでも言いたげにしていた流星を何とかかわして、まあ当人同士しかわからんことってあるからな、て流星の言葉に心から頷いた。
その話が収束した雰囲気に安心すると同時に、緩い眠気が襲う。
あくびを噛み殺すと、目ざとい流星が寝不足か、って聞いてきた。
「寝れてへんの?何、悩みでもあんの」
流星の表情。
何もないよ、
そう言える、と思ったのにな。
「・・・しげ、どないした?」
そんな顔せんでや。
真面目な、優しい顔。
俺が居んのに、みたいなそんな顔。
親友の顔。
言わんで居れるつもりやった俺
どっか行ってもうた。
「・・そ、悩みあって寝られへんの
お前と同じや」
切り出せば流星は益々真剣な顔になって、おれの布団をひっぺがした。
「しげ」
「ん」
「ん、やなくて何?悩みって
俺に言われへんことか?」
負けじと布団を被ろうと、綱引きみたいにまっ白のリネンを引っ張り返すけど、流星の強い引きに圧されてよれた布が指の間から外れた。
本気で抵抗しとらんしな。
「・・・流星こそ、どうなん」
「あ?」
「流星やって、あるやろ、
おれに隠しとること」
「そんなん何も、」
「あるやろ?
最近、遅刻多いし、
いつにも増してぼけーっとしとるし、
急にふらっとおらんようなるし、
数学の授業なのに寝とるし」
何でそんな分かんねん、
驚いた流星の顔がそう語りかけてくる。
分かるわ。
流星のことなんか大概。
どんだけ見てる思ってんねん。
言うたらあかん。
そのたがならもう
飴あげた日に外れたんや。
「なあ、」
言うたらあかん。
そんなこともう、思えへん。
流星に、暴かれたいんやもん。
ほんまは。
「お前の悩み、あいつやろ
・・・小瀧やろ」
先輩とは違う
おれは、
おれは優しくない。
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まいん(プロフ) - Noさん» ありがとうございます。わざわざコメントまで書いていただいて恐縮です。すみません。そんなふうに言っていただけてこちらこそ本当に嬉しいです。ありがとうございます。 (2021年4月30日 22時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - かこさん» Oh…ありがとうございます(泣)こちらこそ早速ご覧いただき本当にありがとうございます。お待たせしてすみませんでした。 (2021年4月30日 22時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
No(プロフ) - ずっと待ってました>_<本当に嬉しい限りです。 (2021年4月30日 18時) (レス) id: a928634097 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - まいんさん» ずっと待ってました( ; ; )更新してくださって本当にありがとうございます! (2021年4月30日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - 名無しさん» お恥ずかしいです。もったいないご感想で恐縮です。そして嬉しいです。私の小説に対してなのか不安になってしまうほどです。何かの間違いでなければ、本当にありがとうございます。 (2021年4月30日 11時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まいん | 作成日時:2019年9月6日 19時