鉛色の空〈JW青×桃〉

7　嘘が下手 ページ7

side 青




なら行こか、て言いかけた瞬間
小瀧を追いかけんのに必死すぎて
下駄箱にカバン放ってきてるのに気づいた。





「あ、悪い。カバン下駄箱や、ちょっと待っとって」






「え、っあ、・・・ふ、ふ藤井くんっ！」




駆けだしかけた後ろから、小瀧が自分の名前を呼ぶから
心臓とまるかと思った。


自己紹介もまだしてへんのに、自分の名前を知ってくれとったこと、
嬉しさを隠そうとして顔が変に歪む。



「え、なに？」



「、ああの、ごめん今日な、かっ買い物する予定あってんやんか、」



あぁこら一緒にかえんのお断りかなと思ったら、





「せやねんけど、藤・・・井くん、濡れてまうし、ああ明日にしようかな？、」




えらい可愛らしい誘い方するやん。
女子みたい。
あかん、ニヤけてまう。





「どこ？俺付き合うで」


ちょっと強引やけど気にしない。


「どこ？」

「・・・えっと、・・正門出た角の、靴屋さん」

「靴買うん？俺スニーカーやったらちょっと詳しいで」

「あ、ちゃう、その・・・う、う上履き」

「上履き？サイズ合わんくなったん？」

「・・・・ええぇ、と、そぉやない、ねんけど」




上履きなんて小さなったら当たり前みたいに爪先だけ突っ掛け方式やから、
少し驚いて聞き直したら、


小瀧がばつの悪そうな顔をするから。



思い出してまったやんけ。








えー、クラスから浮いとるって、まさか嫌がらせまでされとんの？






「・・・ん、待って、上履き？あらへんようになったん？誰かにぱくられたんか？」

「・・・・あ、ちちゃうねん、・・・ま間違えて、家、持って帰ったんかも、？、」



心配かけまいとしてか、動揺して大分つじつまの合わへんことを言っとる自覚はないらしい。



唾が上手く飲み込めんくて、何だか胸が詰まる。



そんなわけわからん嘘つかせとる、どこの誰かも知らん奴に対して怒れてしゃあない。

　
小瀧にしたら、さっさと新しい上履き買って
忘れてもうた方が楽なんかもしらん。

そうかもしらんけど。
その健気っぽい姿に、ちょっと熱くなってもうた。





「ん、分かった」

「ふ、ふふじいくん、？」

「靴、名前かいてある？」

「えっ、あ、ああるけど、」

「探してくるから待っとって」

「はっ？」






小瀧がでっかい目を更にでっかくして驚くのを置き去りにして、さっさと玄関に戻った。

　



──────
引き続き暴走中

8　気持ちに溺れる手前→←6　吃音症

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す