39 ダウンバースト ページ39
side 青
「─────
忘れ物！」
高ぶる感情を無理やり押さえ込んで、その代わりみたいに叫ぶ。
「はい？」
我ながら、よく耐えた、ほんまに。
「あのですね、小瀧くん、一緒に勉強しとったんですけど」
視界に入る、俯いたままの小瀧の見えない表情に
怒りで正気を失いそうになるのに。
「家に、教科書とか忘れ、てきちゃったみたいで。
取りに戻りますね」
声が震えても、もう
このまま帰すわけには行かへん、
この場から離脱できるなら何でもええ。
「あ、あぁ、君は、」
「小瀧、」
男が少し面食らって
一瞬、腕の力が弱まるのを見て、思いっきり小瀧の体を引いた。
そのままダッシュしようて思っとったけど、
走り出さなくても、追いかけては来ない後ろの気配。
逆に不気味で、小走り気味になる。
「・・・りゅ、せい・・・どしたん、っ」
藤井くん、て言ってみたり、
流星、て言ってみたり。
ほんま忙しいな。
そんなんでいちいち俺が落ちたり上がったりしとんの、
知ったらどう思うんかな。
「ええから、話ある」
「そ、それで、り、流星の家行くん？」
「つけられるかもしれんし行かん」
探偵みたいやね、
そう息を切らす小瀧は
さっきあったことなんてまるで慣れっ子やと言わんばかりの様子で。
さっきの状況が異常に思えたのは俺だけみたいで、焦りばかり募る。
小瀧は、俺があの男と引き離すためにわざわざでたらめを言ってまで連れ出したのが解せないみたいで。
俺からしたらそっちのが解せん。
すぐそばに森林緑地のある学校の裏門に回ると、
小瀧が不思議そうな顔した。
「が、学校、流星、今日日曜日やで？」
「うちは日曜日も開いてんねんで、
自習するやつとかも居るし」
「そ、そうなん・・・」
知らんかった、と小瀧が校舎を見上げる。
もしかしたら濱ちゃんも居るかも。
いつもの癖で自分の教室にたどり着いて、自分の机の椅子を引いてどさりと凭れかかる。
疲れた。
精神的に。
机の上には課題で出したノートが帰ってきていて
不用心に開け放たれた窓から吹き込む雨降り前の風にぱらぱら、頁が捲れてた。
小瀧は自分の教室ではないからか、どうしたらいいかわからんみたいに、入り口の所で突っ立っとる。
「・・・はいりや、」
隣の席を指さすと、小瀧は小さく頷いて席までやって来た。
小瀧がぎこちなく椅子に座るのを見届けて、
躊躇わず切り出した。
もう限界やった。
何も知らん自分で居ることは。
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まいん(プロフ) - naさん» ありがとうございます。もう忘れ去られてると思ってるので嬉しいです。お時間割いて見ていただいてわざわざコメントまで、本当にありがとうございました。 (2020年5月18日 23時) (
レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
na - はじめまして。このお話が本当に面白くて絶対に完結させてほしいです。 (2020年5月2日 4時) (レス) id: 195cac4769 (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ありがとうごさいます。もう本当にそんな風に言っていただけて身に余る程幸せです。短編集も見ていただいて有り難いとしかいいようがありません。浮かれた勢いで調子乗って更新してしまったので、またお時間あるときにでも良ければ見てやってくださいね。 (2019年7月18日 8時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
###(プロフ) - まいんさん» いえいえ、どの作品も本当に面白くて、私の目は間違ってなかったなと自分を誉めたいぐらいです(笑) 短編集のほうも時々覗いているので気が向けば更新してもらえると嬉しいな〜と思います(..) (2019年7月18日 2時) (レス) id: 643eb217bd (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ###さんいつもありがとうございます(;_;)色々考えながら読んでくださり、ありがとうございます。気になる展開と言ってくださり嬉しいです！ありがとうございます (2019年7月17日 21時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まいん | 作成日時：2019年6月24日 23時
