鉛色の空〈JW青×桃〉

11　強いひと ページ11

side 桃





「そ・・・、う、です」


多分うまく笑えてない笑顔でやけど
かろうじて、救いようないくらい間抜けな返事をした。


「はは、せやんな。ごめんな、邪魔して」


流星ばいばいお疲れ、って、言い返しも追及もせんおれの馬鹿さに満足したみたいに、クラスメイトは帰ってった。

けど、流星は俺をさっきと変わらん怖い表情で見つめたまま。



「・・・あの、・・・・りゅう、せい」

「なに？」

「・・・お、怒、とるやんな」

「おん」

「な、なんで、」

「・・・・お前が、俺の質問には答えへんくせに
どうでもええようなアホのどうでもええ質問には
アホみたいに答えよるから、
腹立っただけ」


何回もアホ、どうでもええ、て投げ槍な言葉言うて、
何とか怒り逃がそうとしてる流星は、多分ほんまに怒っとる。



「し、質問？」

「あの状況で、何でお前が帰ろうとすんの？
て言うたやんな、俺」

「・・・・あ、それは、お、おれ、ほんまごめん。りゅ、流星に、探してもらってる立場で」

「はあ？お前ほんまにアホか？」

流星は小さく舌打ちして、今のはちゃうわごめん、と言うて続けた。
深呼吸して。



「そうやなくて
お前はなんで、あの場から逃げたん？
俺ら後ろめたいことなんて、何もなかったやろ
どっちか言うたら後ろめたいんは向こうやろ？」


怒っとる対象は、
あのクラスメイトに対してもなんやろうけど
多分一番、おれに対して。


流星のこと、巻き込みたくないなんて
自分に嘘までついて逃げようとした俺に対して。

やってほんまに巻き込みたくないんやったら、
あの場に流星ひとり残して自分だけ逃げようとするわけない。


全部見透かされてる。




「あいつ上履きのこと、知っとったんやで？
そうですちゃうで自分、何で？
お前あんなこと言われてマジで何で平気なん？」


流星は多分、とても正しい。

さっきからずっと自分にとって、ほんまに耳が痛いこと言うてくる流星から
今だって無意識に離れようてしてる。

そうさせんように、流星がいつまでもおれの腕を掴んだままなんが、その証拠。




「俺がさっきあいつに言い返して、
ほんまのこと吐かせたとしても意味ないやろ
たとえぶん殴ったとこで、
何も変わらんやろ肝心のお前がそんなんやったら」



流星の言うことは、正しい。



「・・・なあ、逃げとるだけじゃ、何も変わらへんよ」




そんな風に、おれのことを思って。

今までそんなこと、誰も言ってくれへんかったの。




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