鉛色の空〈JW青×桃〉

27　俺が聞きたい ページ27

side 青






「先生、ケガ人」



誰もが入って来やすいようにと、ドアがない保健室の真っ白い衝立越しに、淳太先生を見つけて声をかける。

先生は俺らのこと、ていうより俺が引っ張ってきた小瀧のこと一目見て顔色を変えた。




「・・・・どうしてん、・・・」



動揺を隠してかける声が優しい。



「小瀧、大丈夫？」

「は、っは、は・・・い」



いきさつは後で聞くな？と先生は聞いたこと無いくらい穏やかな声で、
小瀧の肩に厚手のタオルをかけ椅子に座るよう促した。

生徒の表情、ちゃんと看る先生やから、小瀧が経緯は話すつもりない、って顔したんもきっと分かっとる。


小瀧がそんな心境やって俺も気付いて何となく満足する。
そんなん俺が聞きたいし。
廊下汚してまうから嫌や行きたない、
て意味わからんこと気にする小瀧を保健室連れてくるのに、
床が水浸しになれへんようにわざわざ体育館の渡り廊下側から遠回りしてきたのに
何聞いても申し訳なさそうな顔で基本だんまり、かろうじて口動かしても大丈夫とごめんしか言わへん。
そんなこと誰も聞いてへん。



強気めで押しとんのに俺にも話さへんこと、
他の誰かに簡単に話されたら堪らん、
俺が一番小瀧のこと知っときたい。


────心許せる人間なんかほんまは多い方がええに決まっとるのに、

一人の人間を自分の分かる範囲にだけ置いときたい、って初めて知った感覚に
そんな奴やったんやて自分でも少し、引いた。







「先生、ちょっとこいつよろしく」




先生が俺にもかけてくれたタオル、小瀧の頭に被せて保健室を出た。
どこ行くねんお前もちゃんと拭かな風邪引く、って声を背中に聞きながら。




全部の教室まわって悪魔探しする、て決めた。

小瀧殴った奴見つける、て。






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