�将�. ページ12
『もう出発するの？』
私は身支度を済ませ、素っ頓狂な声をホテルのロビーで上げた。
「下準備が必要です。」
そう言って汽車の切符を一枚、私に渡した。
『だとしても_____いいえ…』
「早く居場所を変えないと足が着いてしまいます。このホテル、そんなに気に入りましたか？」
小声で囁く。
勿論此処に泊まる時は偽名でチェックインした。
『いいえ、然程。』
黒いケープを羽織ると、一人の男_____ホテルの従業員が声を掛けた。
男は私の手に唇を落とした。
「ラネーフスキー御夫妻ですね？」
男が出した名は、旅に於ける私達の偽名だった。
『ええ。そうですが、何か？』
「モスクワに行かれるのですか？だとしたらこの地図の通り、汽車で行った方が…」
男の声を遮ったのは彼、フョードル・ドストエフスキー…否、ラネーフスキーだった。
「切符は買いました。どうぞお構い無く。」
私は彼の目に一種の憤りが宿っているのに気が付いた。
私達が出会った頃、私が他の男と喋っていると、目に現れていた焔。
この頃治ったと思っていたら、また現れた。
「
従業員は惜しそうにそう叫んだ。
彼は私の手を取って歩き始めた。
『嫉妬していらっしゃるの？』
「この頃どうも、貴女が愛おしく思われるんです。」
クスリと笑うとそっぽを向く。
私はこの時彼を本気で愛おしく思った。
この人は、私よりずっと、憐れだと思った。
『昔は？愛おしく無かったんですか？』
「この頃は、より一層。」
私達はお互いを憐れみ合わないと生きて行けないのかもしれない。
でも、それならそれ良い。
それが最善の選択なのだから。
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呉 モヨ子 - chikazeさん» 格好良いっていうか、ドストに尽くす者同士ゴンチャロフさん可愛く見えてきます…笑 更新、頑張れるよう努力します。 (2018年3月11日 7時) (
レス) id: e69ac68703 (このIDを非表示/違反報告)
chikaze(プロフ) - ゴンチャロフさんンンンンン!! 地味に推しという事実。お互い更新頑張りましょう！ (2018年3月8日 21時) (レス) id: 16cd7bec21 (このIDを非表示/違反報告)
呉 モヨ子 - 無さん» はい、精進して参ります。 (2018年1月29日 7時) (レス) id: e69ac68703 (このIDを非表示/違反報告)
無 - いえいえ!作品も多いですし、忙しいこともあるでしょうから構いませんよ。更新ありがとうございます。 (2018年1月29日 0時) (レス) id: 61fbc426b8 (このIDを非表示/違反報告)
呉 モヨ子 - 無さん» 同志ですね！はい、更新頑張ります！本当にお待たせしてしますけど…応援有難う御座います！ (2018年1月27日 7時) (レス) id: e69ac68703 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：呉 モヨ子 | 作成日時：2017年8月1日 10時
