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ここはどこだ?と、アーサーは問いかけたかった。
さっきまでいたはずの彼女は牢屋にはいなかった。
監視役のマシューでさえもいなかった。
兵士に聞いてみたところ
裏口から浜辺の方へ走っていったとのことだった。
ひんやりと冷たい牢屋にアーサーの息だけが響き渡っている。
彼は呟いた。
どこに行ったのか分かるやつはいないか、と。
そこに残っていた兵士は、マシューに口止めをされていたため
彼女がどこへ行ったのかを教えることはできなかった。
先程までAが繋がれていた鎖には彼女の温もりは既に無くなっている。
呆然としていると、アーサーは牢屋の隅にティーカップが置かれていることに気づいた。
彼女が使っていたティーカップだ。
それも既に冷え切っているが
彼女が先程まで使っていったあとが残っている。
ふわりと、昔にプレゼントしたあの紅茶の匂いがした。
一度飲めば病みつきになり、中毒になるあの紅茶だ。
最期の最後まで
彼女を自分のものにしようとしていた欲があったんだと彼は確信した。
ああ、もう間に合わないんだ。
あいつの顔を見ることができないんだと
そう思うと涙が溢れかえった。
泣かないわけがないんだ。
愛しているから。
一瞬、Aの幼い笑顔が脳裏に浮かんだ。
どこか遠い所に居るだろうが
まだアイツの記憶はある…つまりまだAは生きてる。
諦めたような、諦めてないような気持ちで牢屋を去った。
外に控えてたアルフレッドはずっと
時計を見つめては逸らし、見つめては逸らしを繰り返していた。
「アーサー…Aは…」
「アルフレッド、悪りぃ…。間に合わないみてぇだ…牢屋には居なかった。……俺がもっと早く気づいていれば…あいつの最期を見届けられたのかもしれないのにな」
「アーサー…」
「…だが、俺は最善を尽くす。ダメ元だがな…」
そう言ってアーサーはすぐさま2階へと上っていった。
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なつ子第2号@(*´ω`*)(プロフ) - ルーミラさん» コメント&祝電ありがとうございます(´;ω;`) わああああ涙する小説書けて幸せです(><) いえいえ!こちらこそご愛読ありがとうございました!!! (2018年5月13日 22時) (レス) id: 512c53c1af (このIDを非表示/違反報告)
ルーミラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても切なくて、集中して読んでいました!我慢していた涙が最後で出ちゃいましたw今回も素晴らしい作品をありがとうございました! (2018年5月13日 22時) (レス) id: d359785761 (このIDを非表示/違反報告)
なつ子(´∀`*)(プロフ) - 暴走少女@OIMさん» うわわわわああああコメントありがとうございます。゚(゚´Д`゚)゚。こんなにも更新遅くなってしまい申し訳ございません(泣)そしてこんな私の作品を読んで下さり、さらにコメントまで頂けるなんて幸せすぎます!! はい!テスト終わったら猛スピードで書きます(o^^o) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 512c53c1af (このIDを非表示/違反報告)
暴走少女@OIM(プロフ) - 久しぶりの更新ご苦労様です!今日も楽しく読ませていただきました。これからも頑張って下さい!(^^*) (2018年2月4日 15時) (レス) id: c5b7e8e142 (このIDを非表示/違反報告)
なつ子(´∀`*)(プロフ) - 暴走少女@OIMさん» コメント、本当に本当にありがとうございますヽ(;▽;)ノ カナちゃんにキュンキュンできるように心がけたので嬉しいです!! (2017年9月8日 18時) (レス) id: 512c53c1af (このIDを非表示/違反報告)
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