【APH】愛しい君へ呪いを。【アーサー】

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Aを抱きしめたまま動かないアーサーに彼女は首を傾げる。


ちらりと見える彼の腕を見てみれば


戦いの傷だろうか


かさぶたで茶色く汚れた痕がいくつかある。


切り傷だけではない。



打撲によって青く染まった白い肌


銃を握った手にはマメがやぶけ、一部は包帯に隠れている。



傷ついたアーサーの身体はいつかは治るもの。



とは言え、こんな痛みを何百年も抱え込み続け


普通の人とは違う時を生きるなど



誰だって心は傷だらけだ。




アーサーの心、治してあげたい。




Aは彼に従うだけで治癒出来るものだと


今までも、これからも、思い込んでいた。





『アーサー、疲れているのね…。紅茶を入れるから、その間お休みになって』


「...あぁ。」





離れた肌は互いの熱を愛おしそうにしていた。


そして唐突彼は思った。



...甘い物が食べたい...。





「A、なんでも良いから...何か甘い物が食べたいんだ。作ってくれるか？」


『甘い物?材料きらしてるのだけど...』



「なら買ってあるものでいい」


『わかった…じゃあ休んでてね?』




ソファーに一人アーサーを残してAは食料を保管していた棚に向かった。



バラの華が棚の縁に彫られてある。


ツルは鋭いとげをもっている。


美しい華にはとげがある。とよく言うが



彼女と彼の間にある愛という名の欲望は、まさにその通りなのかもしれない。




Aは手前にあるクッキーを取り出した。




『これもアーサーの･･･。』





彼女の周りにある物はみな彼の家のもので


毒されたかのようにパッケージには同じマークが。




『･･･紅茶も、アーサーの。』




何度もかいだこの香り。


最後に自分の家の物を口にしたのはいつかしら。



そっとお湯を注いだ。




「っ･･･。」




ソファーで待っているアーサーは


戦後の痛みと闘っていた。



この痛みが雨とともに流れてしまえばいいのにと何度思ったことか。



声に出さぬよう口元を押さえる。



脳裏に焼き付いたアルフレッドの声。



黙ろうとすればするほど、鮮明にその声が聞こえてくる。




『アーサー、クッキーでいい？』


「なんでもいいつったろ･･･。」



『･･･そうよ、、ね･･･。』





たしかに彼はそう言っていた。




甘い物ならなんだって＿＿＿＿＿＿。




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