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Aside
『…色々、ありましたね。』
大正時代から随分と街並みは変わったけれど、
この歴史ある屋敷は、昔も今も変わっていない。
『この屋敷の畳も、家を支えている柱も、私の事を覚えているのかなと思うと、少々感慨深い気がします…』
私がそう呟くと、
槇寿郎さんは姿勢を直し、私に向かって深々と頭を下げた。
『し、槇寿郎さん!?!』
槇「すまない!取り返しのつかないことをしてしまった…!!
君と竈門君に叱責された後…俺はようやく目が覚めたんだ。
あの後、竈門君には鴉で謝罪の気持ちを綴った手紙を飛ばしたが、君には直接謝らなくてはいけないと思い、何も送らなかった。
次に会った時に、必ず謝ると…
ただ____。
次に君が此処へ戻ってきたときは、鬼舞辻無惨を倒し、平和になった時だった。
…そのとき…既に君の両目と両耳が使えなくなっていた。
言葉で謝ることも、手紙で謝ることも出来なくなっていたんだ。
俺は本当に、何年も何十年も、死ぬまで反省し続けた。これ程罪深いことはないと思う。
だから、決して許せとは言わない、ただ___」
私の存在が、彼を何年も呪縛していたのか。
辛そうに語る槇寿郎さんに、私は耐えられなかった。
『だから、いいんですよ、もう。
それだけ反省していたのなら十分です。寧ろ驚かされたくらいですよ。
ですから、そんな私なんかのことで気に病まないでください…。 』
へらっと口角を上げてみたが、作り笑顔は少し苦手だ。上手く笑えない。
そんな私には目もくれず、槇寿郎さんは話を続ける。
槇「“私なんか”ではない。聞いてくれ、俺はこの言葉がずっと言いたかった。
あの時君に言ったのは全くの嘘だ。俺は君のこと___」
千「ひ、火宮さん!!父上!!
兄上が火宮さんに会いたがっています!!」
突然、千寿郎君の大きな声が槇寿郎さんの声を遮った。
私は、急いで槇寿郎さんに耳打ちをする。
『槇寿郎さん、では一つだけお願いを。
私、“杏寿郎さん”には、過去のことを思い出してほしくないんです。だから、彼に昔の事を言わないでいてください。
彼には、昔に囚われず、今世で幸せになってもらいたい。
だから、それだけ…』
私がそう言い終えると、勢いよく襖が開いた。
「なんだかよく分からないが、父上、失礼致します!!」
『…あ!煉獄先生!!
お邪魔しています…!』
嗚呼、やっぱりこの笑顔が好きです。
貴方はどうか、なにも知らないままでいて。
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ひなた(プロフ) - コメント失礼します。語彙力がすごい上にとても話が面白いのでこの作品推しますよ!この作品大好きです。 (2023年1月10日 15時) (レス) @page9 id: 766649bc8e (このIDを非表示/違反報告)
靈菜(プロフ) - コメント失礼します!ほぼ毎日読ませて頂いてます!話の構成がとても上手ですごく憧れてます!どのような感じで考えているのか、良ければぜひ教えて下さい! (2021年10月2日 22時) (レス) @page2 id: b6a4af0785 (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - ひかるさん» 合掌…!!?こちらこそ朝早く読んでくださって本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2020年11月29日 8時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - 朝から震えが止まりません・・・!更新ありがとうございます!(合掌) (2020年11月29日 8時) (レス) id: e49f586e8e (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - ゆず@yuzuさん» そんな、感情移入してくださっていたなんて…光栄です…(泣)はい!更新頑張らせていただきます!これからもぜひよろしくお願いいたします! (2020年11月28日 13時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらび餅 | 作成日時:2020年11月15日 9時