35 ページ36
煉獄side
(……む？)
帰宅途中、
意外にも火宮が道場に入ることを心待ちにしている自分に気づき、驚いた。
(よもや！これではまるで子供のようではないか！)
そんなことを考えながら、目の前にある煉獄家の門をくぐる。
千「あ…！」
庭の掃除をしていた弟の千寿郎が、俺の側へ駆け寄ってきた。
千「おかえりなさい兄上！今日は随分早いんですね！」
「ああ！ただいま千寿郎！」
スーツを脱ぎ、袴に着替えると
千寿郎は苦笑いをしながら俺に話しかけてきた。
千「今朝も父上、すっごく楽しみにしていらっしゃったんですけど…
やっぱり、生徒さんを…しかも、女の子を道場へ連れてくるなんて、
無理…ですよね？」
父上になんて説得すればいいか…と悩む千寿郎に、
俺は今日あった出来事を全て伝える。
千「来て、下さるんですか…！！」
千寿郎は口を手で抑え、驚いた様子で俺の話を聞いていた。
「ああ！全て本当だ！」
はっきりとそう伝えると、千寿郎は目を輝かせ、嬉しそうに微笑む。
千「あ、あの、無理だったら良いのですけれど、
もし宜しければ、その方のお名前を聞かせていただいても良いでしょうか？」
「うむ…」
伝えてはならない…。
一瞬、そう思ったが
煉獄家の門下生になるなら伝えても問題は無いな、と思い直し、俺は伝えることにした。
「良いだろう！
彼女の名前は、“火宮 A”という。
俺のクラスの学級委員をしてくれている、明るく、頼りになる良い子だ！きっと千寿郎とも仲良く…
…千寿郎、どうした？」
目を大きく見開いた千寿郎は、瞳にみるみる大粒の涙を溜めていく。
手に握られていたほうきが地面に落ちた。
千「…あ、いや、なんでもありません！なん、でしょうね、自分でもわからないです…、はは、」
急いでほうきをひろった千寿郎は、零れそうな涙を誤魔化すようにまた庭をはき始めた。
(そういえば、竈門ベーカリーでも、火宮に会った少年達が大泣きしていた。
今回は、千寿郎までも…)
「彼女に、何かあるのか…？」
俺は不思議に思い、千寿郎に聞いたが
なんでもないですの一点張り。
(俺の知らない何かを、彼女達は知っているのかも知らない…。)
後で、本人に直接聞いてみようと心に決め、
俺は道場へと向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 665人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひなた(プロフ) - コメント失礼します。語彙力がすごい上にとても話が面白いのでこの作品推しますよ！この作品大好きです。 (2023年1月10日 15時) (
レス) @page9 id: 766649bc8e (このIDを非表示/違反報告)
靈菜(プロフ) - コメント失礼します！ほぼ毎日読ませて頂いてます!話の構成がとても上手ですごく憧れてます！どのような感じで考えているのか、良ければぜひ教えて下さい！ (2021年10月2日 22時) (レス) @page2 id: b6a4af0785 (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - ひかるさん» 合掌…!!?こちらこそ朝早く読んでくださって本当に嬉しいです！ありがとうございます！ (2020年11月29日 8時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - 朝から震えが止まりません・・・！更新ありがとうございます！（合掌） (2020年11月29日 8時) (レス) id: e49f586e8e (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - ゆず＠yuzuさん» そんな、感情移入してくださっていたなんて…光栄です…(泣)はい！更新頑張らせていただきます！これからもぜひよろしくお願いいたします！ (2020年11月28日 13時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わらび餅 | 作成日時：2020年11月15日 9時
