検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:309,011 hit

31 ページ32

煉獄side





「炎の呼吸__壱ノ型__」






俺が壱ノ型を構えると、火宮は泣きそうなほど眉をひそめ、それから寂しそうに笑った。



「…!?」



見慣れない彼女の表情に少したじろいだが、
直ぐに体勢を立て直し、彼女の元へと進む。




風を切り、俺が竹刀を振るすんでのところまで来た時

彼女もまた竹刀を抑え、構えた。



(な…)





あれは…


あれは、肆ノ型の構え___!!








…偶然か?




___否、違う。





彼女から微かに香る火花の匂いが、それは本物だと俺に伝えてきた。




(洗練された無駄の無い動き__。

授業や部活で少し鍛えて出来るほどのものでは無い…。

そもそも、炎の呼吸は煉獄家のみに伝わるものであって…門下生でもなかった彼女が、なぜ知っているんだ…?)




様々な疑問が脳裏に浮かび上がってきたが、
それを振り切り、突き進む。






『炎の呼吸_肆ノ型__』



彼女も抑えていた竹刀を振り切り、目を見開いた。
美しく大きな瞳に、俺の顔が映り込んでいる。


身体中が燃えているような心地の中、お互いがお互いに刃を振るった。





「『 不知火 / 盛炎のうねり 』」



…なんて、美しいのだろう。



まるで、神楽を舞っているかのように…。


艶やかな炎に身を包み、彼女は舞った。









格技場に爆風が吹く。



炎は、互いの威力が五分五分だった為か。

お互いの炎同士が飲み込みあって、直ぐに消えてしまった。




“凄…い…!!早くて見えなかった!!”

“俺、なんか火が見えた気がした”

“俺も俺も! ”





端で試合を見ていた生徒達が騒いでいると、それを断絶するかのように予鈴が鳴った。




『あー……予鈴、なっちゃいました、ね』


「あ…ああ!そうだな!!これ以上続けると五時間目に間に合わなくなってしまう!」


ほら、帰った帰ったと他の生徒をドアへ手招きすると、ちぇっ、と言わんばかりの不満顔で生徒達は教室へと戻って行った。


格技場には俺と、火宮だけが残っている。


「身体は大丈夫か、火宮」

俺が問いかけると、火宮は少し驚いた顔をしてから笑った。


『…だ、大丈夫ですよ!
すごく楽しかったです!ありがとうございます!


…ただ、そうだったからこそ、少し名残惜しいですね』



ああ、変なこと言ってすみませんと
彼女は謝りながら道具をしまった。


別段変なことではない。
実を言うと、俺も少しだけ、名残惜しい。


「変なことを聞くが…」

『はい?』



「君さえ、もし良ければ…」

32→←30



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (334 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
665人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ひなた(プロフ) - コメント失礼します。語彙力がすごい上にとても話が面白いのでこの作品推しますよ!この作品大好きです。 (2023年1月10日 15時) (レス) @page9 id: 766649bc8e (このIDを非表示/違反報告)
靈菜(プロフ) - コメント失礼します!ほぼ毎日読ませて頂いてます!話の構成がとても上手ですごく憧れてます!どのような感じで考えているのか、良ければぜひ教えて下さい! (2021年10月2日 22時) (レス) @page2 id: b6a4af0785 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ひかるさん» 合掌…!!?こちらこそ朝早く読んでくださって本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2020年11月29日 8時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - 朝から震えが止まりません・・・!更新ありがとうございます!(合掌) (2020年11月29日 8時) (レス) id: e49f586e8e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ゆず@yuzuさん» そんな、感情移入してくださっていたなんて…光栄です…(泣)はい!更新頑張らせていただきます!これからもぜひよろしくお願いいたします! (2020年11月28日 13時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わらび餅 | 作成日時:2020年11月15日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。