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煉獄side
「炎の呼吸__壱ノ型__」
俺が壱ノ型を構えると、火宮は泣きそうなほど眉をひそめ、それから寂しそうに笑った。
「…!?」
見慣れない彼女の表情に少したじろいだが、
直ぐに体勢を立て直し、彼女の元へと進む。
風を切り、俺が竹刀を振るすんでのところまで来た時
彼女もまた竹刀を抑え、構えた。
(な…)
あれは…
あれは、肆ノ型の構え___!!
…偶然か?
___否、違う。
彼女から微かに香る火花の匂いが、それは本物だと俺に伝えてきた。
(洗練された無駄の無い動き__。
授業や部活で少し鍛えて出来るほどのものでは無い…。
そもそも、炎の呼吸は煉獄家のみに伝わるものであって…門下生でもなかった彼女が、なぜ知っているんだ…?)
様々な疑問が脳裏に浮かび上がってきたが、
それを振り切り、突き進む。
『炎の呼吸_肆ノ型__』
彼女も抑えていた竹刀を振り切り、目を見開いた。
美しく大きな瞳に、俺の顔が映り込んでいる。
身体中が燃えているような心地の中、お互いがお互いに刃を振るった。
「『 不知火 / 盛炎のうねり 』」
…なんて、美しいのだろう。
まるで、神楽を舞っているかのように…。
艶やかな炎に身を包み、彼女は舞った。
格技場に爆風が吹く。
炎は、互いの威力が五分五分だった為か。
お互いの炎同士が飲み込みあって、直ぐに消えてしまった。
“凄…い…!!早くて見えなかった!!”
“俺、なんか火が見えた気がした”
“俺も俺も! ”
端で試合を見ていた生徒達が騒いでいると、それを断絶するかのように予鈴が鳴った。
『あー……予鈴、なっちゃいました、ね』
「あ…ああ!そうだな!!これ以上続けると五時間目に間に合わなくなってしまう!」
ほら、帰った帰ったと他の生徒をドアへ手招きすると、ちぇっ、と言わんばかりの不満顔で生徒達は教室へと戻って行った。
格技場には俺と、火宮だけが残っている。
「身体は大丈夫か、火宮」
俺が問いかけると、火宮は少し驚いた顔をしてから笑った。
『…だ、大丈夫ですよ!
すごく楽しかったです!ありがとうございます!
…ただ、そうだったからこそ、少し名残惜しいですね』
ああ、変なこと言ってすみませんと
彼女は謝りながら道具をしまった。
別段変なことではない。
実を言うと、俺も少しだけ、名残惜しい。
「変なことを聞くが…」
『はい?』
「君さえ、もし良ければ…」
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ひなた(プロフ) - コメント失礼します。語彙力がすごい上にとても話が面白いのでこの作品推しますよ!この作品大好きです。 (2023年1月10日 15時) (レス) @page9 id: 766649bc8e (このIDを非表示/違反報告)
靈菜(プロフ) - コメント失礼します!ほぼ毎日読ませて頂いてます!話の構成がとても上手ですごく憧れてます!どのような感じで考えているのか、良ければぜひ教えて下さい! (2021年10月2日 22時) (レス) @page2 id: b6a4af0785 (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - ひかるさん» 合掌…!!?こちらこそ朝早く読んでくださって本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2020年11月29日 8時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - 朝から震えが止まりません・・・!更新ありがとうございます!(合掌) (2020年11月29日 8時) (レス) id: e49f586e8e (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - ゆず@yuzuさん» そんな、感情移入してくださっていたなんて…光栄です…(泣)はい!更新頑張らせていただきます!これからもぜひよろしくお願いいたします! (2020年11月28日 13時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらび餅 | 作成日時:2020年11月15日 9時