検索窓
今日:24 hit、昨日:2 hit、合計:309,034 hit

2 ページ3

Aside

「おはよう!田中少年!歴史のプリントが出ていないぞ!ちゃんと出すように!
村田少年!顔が暗いぞ!!おはよう!!!」



今日も、煉獄さんは絶好調だ。




校内に響き渡る彼の大きな挨拶に、思わず緩む口元をそっと手で隠す。


いけない、いけない。

私の気持ちは、誰にもバレてはいけないのだ。



中等部が終わってしまって、残りは
高校生活の3年間。

あと3年しか、キメツ学園___いや、彼の近くに居ることは出来ない。


それならば、精一杯楽しまなければ。



『煉獄先生、今日も朝からお元気ですね!
おはようございます』

「ああ、おはよう!火宮少女!後で社会科室から地図を持ってきてもらってもいいだろうか!」


『あ、はい!分かりました!』


( やっと、少し頼ってもらえるくらいになった。 )


高等部に入ってから今まで、頼られるどころか名前すら何度も間違えられていた。

それでもめげずにコンタクトをとっていたかいがあったというものだろうか。

( 少しは、私のことを頭の何処かに置いておいてくれている… )


そのことが確認出来て、心がじんわりと暖かくなる。
しかし、それと同時に_



( ____A! 千寿郎に明日の任務について説明しておいてほしい!____)

(____先日の任務で背中に怪我を負ってしまってな、不甲斐ない!胡蝶から軟膏を渡されているのだがどうも手が届かなくてな、A、代わりに塗ってはくれまいか?____)



あの、辛くも幸せだった日々を思い出して
心苦しくなる。




____もうきっと、貴方の肌に触れることも、貴方に名前を呼んでもらえることも、永遠にないのでしょうね__。




嗚呼、いけません、A。
これ以上、欲を張っては。

『恐ろしい。こんなに自分が強欲だったなんて…。』

うっすら涙が溜まり始めていた目を瞑り、両手で頬を叩いた。


無理なものは無理なんだから。
私達は、生徒と先生で。
彼には記憶が無くて。
それで、それで……


あの場で私達を守り抜いて死んだ、彼が生きているだけで私は充分幸せなんだから。


『今は、とにかく責務を果たさないと。』


せっかく、頼って貰えたんだもの。



私はスクールバックを机の横に掛けて、社会科室へと急いだ。

3→←1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (334 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
665人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ひなた(プロフ) - コメント失礼します。語彙力がすごい上にとても話が面白いのでこの作品推しますよ!この作品大好きです。 (2023年1月10日 15時) (レス) @page9 id: 766649bc8e (このIDを非表示/違反報告)
靈菜(プロフ) - コメント失礼します!ほぼ毎日読ませて頂いてます!話の構成がとても上手ですごく憧れてます!どのような感じで考えているのか、良ければぜひ教えて下さい! (2021年10月2日 22時) (レス) @page2 id: b6a4af0785 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ひかるさん» 合掌…!!?こちらこそ朝早く読んでくださって本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2020年11月29日 8時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - 朝から震えが止まりません・・・!更新ありがとうございます!(合掌) (2020年11月29日 8時) (レス) id: e49f586e8e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ゆず@yuzuさん» そんな、感情移入してくださっていたなんて…光栄です…(泣)はい!更新頑張らせていただきます!これからもぜひよろしくお願いいたします! (2020年11月28日 13時) (レス) id: 55e2874e26 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わらび餅 | 作成日時:2020年11月15日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。