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A:糸師 凛が不法侵入している
さすがの私も誰もいないと思っていた家に人がいたのだ。凛なんて絶対来ないと思ってたから。どうせ彼女さんときゃっきゃうふうふしてるんだと思ってたのに。
驚いえ固まっている私をまじまじと上から下までじっくりと見ている。
「お前……誘ってんのか?」
『っはぁ!?』
ようやく出た言葉がこれだ。謝れ不法侵入者め。てかなんで開けられたんだよこの野郎
凛は少し口角をあげて舌なめずりをした。もう何が何だか訳が分からないし色気がダダ漏れでかっこいいのも気に食わない。凛の目は獲物を見つけた肉食動物のように爛々と輝いて見えた。
声を出す間もなく私はベッドの中へ引きずり込まれ頭を掴まれ深いキスを喰らう。真夜中の月の光だけが頼りの中。周りの部屋の人達もみな寝静まって物音の一切しない部屋でぴちゃぴちゃと水温だけが響く。
だめだ。このままじゃ。私は一生この行為をする友達止まりになってしまう。それにもう、しんどいんだ。報われなすぎる。この恋にも終止符をうたなきゃいけない。私は彼の方をぐいっと押し顔を逸らす。
『ねぇ凛……やっぱ彼女を大切にした方がいいんじゃないの?』
「…は?」
『バレたらどうすんのよ。』
だめだ───やっぱり私にはこんな言い訳をつらつらと並べることしか出来ない。きっぱりと好きだからできないとは言えない。反応が怖いから。拒絶されたら耐えられないから。だったらされる前にした方がまだ楽だ。
「バレねぇだろ。」
『いやでも、「それに」』
凛の目は私だけを見据えている。沈黙が嫌に刺さる。
「お前だって背徳感得て感じてんだろ」
『……っ』
思わず目から一筋の涙が溢れた。幸い暗くて彼には見えていないようだ。私は隠れて涙を拭うために顔の向きを変える。嗚咽が漏れないように指を強く噛む。息を整えないと、また涙が出てしまう。
100%の否定はできない。少しぐらい背徳感は感じている。でも1%くらい。残りの99%はただの純粋な好きという気持ちだった。すーはーと息を整え涙をシーツで拭う。
『純粋な好意に決まってんでしょ』
彼はきっと真に受けてくれない。私に腕を巻き付けて「続きやろうぜ」なんて言ってくる。
涙のあとなんてきっと気づかない。嗚咽もきっと他のものだと思うだろう。彼は私の気持ちに気づいてくれない。それだけが私の心に響いた夜だった。
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作者名:macaron | 作成日時:2023年4月2日 21時