159 - 高3 Yuri Side ページ20
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- 侑李side
大貴「…お前来るの早くね？まだ1時間あるよ」
玄関で呆れ顔の大貴。
「ちょっと2人で話したくて…」
卒業祝いの待ち合わせ前に大貴の家に来た僕。
かれこれ10年以上前から遊びに来ている大貴の部屋に入る。
ベッドには先程まで持っていた鞄や卒業アルバムが無造作に置いてあった。
床に座ると、ローテーブルを挟んで向かい側に大貴が胡座をかいて座る。
単刀直入に訊くことにした。
「修学旅行の時…Aが告白したのに付き合わなかったのはなんで？」
振られた翌日、ホテルの砂浜でAから聞いた。
色々あったから今まで追及することが出来なかった。なんか聞いちゃいけない気がして…。
大貴は僕が知っていたことに驚かなかった。Aが僕を頼ることを予測していたのかも。
大貴「…恋人より幼馴染のほうが居心地良いから」
刈り上げを手で撫でながら視線を僕から窓の方へ外した。落ち着かない時とか誤魔化したりする時の癖。
「……なんで嘘つくかな。分かるんだけど、こんだけ長いこと一緒にいんだから」
無性にムカついて語気を強めたら、窓から視線をこちらに戻す大貴。
大貴「…お前には分からないよ。“付き合ったらそれで皆幸せ”とは限らないだろ」
「っ…」
急に見たこともないくらい鋭く冷たい目で睨みつけてきたので言葉に詰まった。
大貴「……結果的に良かった。あのタイミングで付き合ったとしても直後に親のことがあって……付き合う余裕なかったと思う」
大貴「どうせ俺のことだから、遥香ちゃんのこと放っておけなくて、“俺が支えないと”って……Aのことそっちのけで彼女の傍にいたと思う」
遥香ちゃんのせいにしようとしてるけど、なんだか納得がいかない。
あの時期、タイミングを見計らって僕がAと別れたのになんで…？
「後からならなんとでも言えるよ。じゃあ今から付き合えば？」
大貴「それは出来ない。もうこれまでみたいに傍にいてやれないし」
それは事実。もう今までとは違う…春からそれぞれ違う環境で生活していくんだ。
侑李「もういい…この話はやめた。そいえばAは紗奈達に約束したしね…彼氏出来るまで大貴に会わないって」
大貴「ははっ、…それな。楽しみだわ」
そう言って無理矢理口元は笑顔を作ったけど、眉尻を下げて寂しそうな目をしていた大貴。
この顔がしばらく頭から離れなかった…。
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作者名：もちもち
| 作成日時：2019年8月19日 20時
