155 ページ16
.
ちなみにここは俺の家だから安心して、と言いながらベッドから降りた大ちゃん。
テーブルの上に置いてあったペットボトルの水をゴクゴクと飲んだ。
Aも飲みなよ、と飲みかけのそれを渡してきたのでベッドから起き上がって受け取った。
でも口を付けるのに躊躇して…そのまま握りしめた。
部屋を見回すと引っ越し業者のイラストが描かれた段ボールが積まれていた。
大貴「最近、美波と別れた後に引っ越したの」
たぶん悪気なく言ったと思われるその言葉に、胸が締め付けられた。
「……ごめん。私のせいだ」
どんなに謝ったってもう2人の関係は戻らないのに…
……戻って欲しくないくせに。
大貴「あぁ…ん〜とね…」
私の言葉を聞いてからしばらく言葉を選んでいるように唸った。
大貴「謝るのは俺の方なんだ」
「………え？」
私の真横にゆっくり腰掛けて顔を覗き込んできた。
距離が近くて、思わず視線を前の方に移したら、テレビ台の横に写真たてが飾ってあるのに気付いた。
その中の写真には、高校生の紗奈、慧くん、ちーちゃん、大ちゃん、そして私の5人が映っている。
これは…卒業式の時に撮った写真。
私の視線に気付いた大ちゃんが口を開く。
大貴「…はは…気持ち悪いでしょ。高校の時の写真ずっと飾ってんの」
自嘲気味に笑いながら、その写真を取りに行ってまた私の横に座った。
慧くん、ちーちゃん、大ちゃんの男子3人はブレザーのボタンが無くてネクタイも着けてない。
慧くんなんてそもそもブレザーを着てないし、ブラウスのボタンの一部も無くて胸元がはだけている。
「ぷっ……」
あまりにぼろぼろの姿に思わず笑ってしまった。
…懐かしい。
写真に映る笑顔の大ちゃんを見て、当時抱いていた恋心が蘇るような…胸が熱くなる感覚になった。
今もそれは胸の中にあるけど。
大貴「……ねぇ…卒業式のこと…覚えてる？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 226人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちもち
| 作成日時：2019年8月19日 20時
