140 - Yuri Side ページ1
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- 侑李side
僕は何も言ってないし責めてないのに、勝手に物思いにふけって完全に酔っ払ったA。
まだ飲み足りないらしくていつも通り花火の丘に行きたいと言い出した。
タクシーつかまる時間じゃないからなぁ…なんてスマホを見たら誰かからメッセージが来ていた。
大貴テレビ局出てそっち向かってる
大貴もう帰っちゃった?近くまで来てる
忙しいだろうから、どうせ返信なんて数日後…そう思っていたあいつからのメッセージだった。
でも残念ながら横にいるこの子は意思疎通が出来る状態じゃない。
それに周りの目も気になる。
まだ美波と付き合っていると思っている世間の目。
顔を見ても芸能人だなんて分からない人だっているだろうけど。
こんな街中でAが取り乱して、周囲の人が大貴に気付いたりしたら最悪。
ここに呼びたくないな。
コンビニのガラス扉越しに楽しそうにお酒を選んでいるA。
それ以上飲んだら潰れるから水にしてよね。
このまま家に帰そうしたら怒りそうだし……望み通り花火の丘にしとこうか。
侑李花火の丘ね
すぐに既読がついた。
は?なんで?…なんて、このメッセージを読んだ大貴の顔が想像できた。
「……よし、じゃあ行こうかな」
…
満月で天気も良かったから丘からの景色は最高だった。
月を見上げてるAは足元がふらついている。
A「ねぇ知ってる? “月が綺麗ですね” って “あなたを愛してる” って意味なんだって。
私知らなくて、色んな人に言ってたかも」
修学旅行の時に伊野ちゃんがそんな話をしてたなぁ……
「…大丈夫だよ。普通の人はそんな意味で受け取らないから」
コンビニのビニール袋の中からチューハイを出したA。
これ以上飲んだら吐きそうだから無理矢理奪って代わりに水を渡した。
奪ったチューハイを飲んでいたら、神社の境内に続く道から人が歩いてきた。
昼に会った時と同じパーカーを着ている大貴。
キャップを被っているけどヘアメイクとか全部そのままだった。
A「“幼馴染”っていう中途半端な距離じゃなくて、1人のファンとして大ちゃんへの気持ちを割り切れたらいいのに……」
こちらに背を向けて話し続けるAは気付いていない。
声をかけようとしたら大貴に制止された。
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作者名:もちもち | 作成日時:2019年8月19日 20時