105 ページ8
.
渡された袋に描かれているのは、私には縁のない高級ブランドのロゴ。
恐る恐る中身を取り出してみると、リボンのかけられた赤い箱が出てきて、更にその中から薄い包装紙に丁寧に包まれたワインレッドのキーケースが出てきた。
(「え、なんで…？」)
(大貴「Aの鞄、いつもぐちゃぐちゃでよく鍵紛失してるから」)
付き合って1年記念…
違う…そうじゃない、って呟いた私。大貴がベッドに腰掛けて私の顔を覗き込む。
あんまり趣味じゃない？ って。
(「物じゃなくて……
一緒にゆっくり過ごす時間が欲しかった」)
(大貴「…………」)
寂しかったんだ。
なんの連絡も無いから交際1年なんて、忘れてるのかと思ってた。
その日、ほんのちょっとだけ早く帰ってこないかな、って期待した自分が馬鹿だったって泣きながら寝たの。
大貴は目を伏せて、ギュッと服の裾を握りしめていた。
(大貴「………ごめん。
誕生日の時もこうやって寂しい思いさせたよな」)
私はわがままで……
彼の時間ばかり欲しがった。
(大貴「物で誤魔化すなんて最低だな俺。 ……コレ、要らなかったらテーブルに置いといて」)
口元は無理やり笑ってたけど、眉間にシワ寄せて辛そうな表情だった。
きっとあのプレゼントは、忙しい中、私のことを考えて買ってきてくれた物のはずなのに。
帰ってきた彼からお酒の香りがしたことにもイライラしちゃったんだ。 それが仕事の付き合いで仕方なく行った飲み会だったのかもしれないのに。
大貴の気遣いを……優しさを……
素直に受け取れなかった。
付き合い始めてたった1年で、考え方のズレは生じてたのかな。
あの頃はそこまで気にしなかった。
やっぱり、別れて良かったんだ。
私が彼の近くにいても彼は幸せになれない。
母「A？ え、どうしたの？」
胸の痛みを無視して、とりあえずお風呂に入ることにした。 着替えを取りに突然階段を駆け上がった私を不思議そうに声をかけるお母さん。
お父さん、海外にいる期間が長かったから傍にいられて嬉しいんだろうな。
傍にいられない辛さ…
私はまだまだ恋愛に関しては未熟だ。
何度も辛い思いをして、それでも仕方ないと割り切っていたつもりだったのに、この4年間……割り切れなかったんだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちもち(プロフ) - かのんさん» ありがとうございます！感動して頂けたなんて…嬉しいです！いつか続きを書きたいと思ってます。私も無事に妊娠・結婚するエンドを読みたいですw (2020年6月11日 8時) (
レス) id: e672c225a3 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もちもちさん！お話全て読ませて頂きました！すごく感動してとても読み応えがありました！是非続編書いて頂きたいです。番外編でのお話楽しみにしてます！個人的にはこの後無事に妊娠してハッピーエンドのお話が読みたいです、w。待ってます！ (2020年6月10日 16時) (レス) id: 2bb2dfb322 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - 有岡担さん» ありがとうございます！心に響くものがあったのだとしたらとても嬉しいです(涙)近いうちにまた過去話とか書きたいなぁと思ってます^_^ (2020年5月11日 13時) (レス) id: e672c225a3 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - もちもちさんのお話最高でした！読んでいてところどころ泣きました。感動しました。番外編楽しみに待ってます。 (2020年5月11日 1時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - 名無し24427号さん» ありがとうございます！番外編をいつか更新した際にはまた読んで頂けると嬉しいです！ (2020年1月1日 7時) (レス) id: e43ac0a964 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちもち
| 作成日時：2019年12月22日 21時
