【完結】雲の切れ間から After Story 3rd - Daiki.A

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大貴「は…？」


「会社の先輩。前に話したことある久保さんって人。 休みの予定合うし、しっかりした人だから良いかなって…実は前からその人のこと気になってたから……好きなのかも、ごめんね」



平然を装う。 思ってもいないことを言葉にする。



休みの予定が合うのは事実。 しっかりした人だっていうのも。



でも、もうやだ…こんなの。



好きでもない人を『好き』とか『付き合おうと思ってる』とか言うことも。しかもそれを大好きな人に報告してるなんて。



大貴「それが……Aが俺と別れたい理由なの？」


「……う…うん」


大貴「嘘ばっか」



ため息を大きくつく音が聞こえた。 顔を見てないから表情は分からない。 でも呆れたような雰囲気が伝わってきた。



「……嘘じゃないもん」


大貴「じゃあ今の……もっかい俺の目見て言ってみろ」


「ちょっ…やっーー」



視点の定まっていなかった私の顎を掴み、無理やり自分の方へ顔を向けさせた。



無表情で不機嫌そうに眉間にしわを寄せてる顔が見えた。



咄嗟に大貴の手首を掴んだけど、抵抗すると彼の気持ちを傷付ける気がして手をそっと下ろした。



目の前の幼馴染が……
目に涙を溜めて今にも泣きそうな顔をしたから。



「…………」



さっき言ったことをそのまま口に出すだけなのに…



突き放せばいいのに…



数センチの距離にいる大貴を見た瞬間、言葉が出てこなくなった。 頭の中は真っ白。



大貴「昔っから嘘つくのが下手だよな。 癖があるからすぐ分かる」


「なっ……」



そんなこと言ったら大貴だって、色んな癖があるんだよ。



照れると頭の後ろ触ったり手の甲で口元覆って横に視線をずらすの。 あと考え事する時に唇を指で何度もなぞったり…



口癖も多いよね。 挙げたらキリがないくらい知ってる。



全部……好きだから。
昔からずっと1番近くで見てきたから。



お酒のせいか、お風呂に入ったせいか、火照った頬を涙が流れ落ちていくのを感じた。









大貴「……そんな顔すんな」










昔から私はすぐ泣くから…すぐ落ち込むから…
そう言って慰めてくれるんだよね。









「だいき……、」



嘘を上手につくことは出来ないけど。 本当に伝えたい気持ちを口に出すことも出来ない。



顎を掴んでた手が離れたけど、私は大貴の方に顔を向けたまま。



近付いてきた顔を避けることはせずに目を閉じると、



唇同士が優しくゆっくり触れた。



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