111 - 高3 卒業式前日 ページ14
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その日の晩。
私は部屋で1人机に向かっていた。 お昼に紗奈から渡された4枚のリングノートの切れ端を見つめながら。
(紗奈「あのね…私、ひとつ提案があります!」)
(大貴「断る!」)
(紗奈「まだ何も言ってねーわ! もう、話の骨を折らないで!」)
(侑李「はいはい……で? なに?」)
紗奈は鞄からA5サイズの小さくて黄色いリングノートを取り出して、それを1枚1枚丁寧に破りながら皆に配った。 1人、4枚ずつ。
(紗奈「未来の皆への手紙を書くの」)
(「え……どういうこと?」)
(紗奈「10年後の自分じゃなくて、皆へ手紙を書くの! だから4枚ずつね。
書いた手紙は内容を今読まれると恥ずかしいから、見えないように4つ折りでテープ留めして、10年後のそれぞれの手紙に貼り付ける。 ……これ良くない?!」)
(侑李「はぁ…なるほど。 そしたら、10年後には自分だけじゃなくて皆からもメッセージも読めるわけね」)
(紗奈「そういうこと!」)
(慧「面倒くさいからやだ」)
面倒くさがる男子陣を紗奈がしつこく説得して、結局書くことに。
紗奈、慧くん、ちーちゃん宛ての手紙は書けた。
中学の頃からの思い出を振り返りながら書いたから、A5ノート1枚が隅から隅まで埋まるくらい長文になっちゃった。
ちーちゃんに関しては更に長文。 付き合いが長い文、書きたいことが多過ぎたから。
ちーちゃんはいとこだから、4人の中で直近で会う可能性が1番高いのにね。
そして……
今書こうとしているのは10年後の大ちゃんへの手紙。
「っ、……」
書こうとしてもペンが進まない。
なぜか涙が溢れてくる。
私の思い出の中には、必ずあの笑顔があった。
これから先もずっとそうであって欲しかった。 卒業してばらばらになるのは仕方のないことなのに。
大ちゃんは私宛ての手紙にどんなこと書いてくれてるのかな……
明日、学校で受け取ったらこっそり読んでしまいたいけど、それはルール違反だから出来ないよね。
10年後が楽しみだな…
ノートに涙が落ちないようにタオルで目を拭って、ペンを持ち直した。
大ちゃんへ…
いや、手紙で大ちゃんはおかしいかな。
もう呼び馴れてしまった愛称。
10年後も同じように彼のことを親しく呼べているかな。
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もちもち(プロフ) - かのんさん» ありがとうございます!感動して頂けたなんて…嬉しいです!いつか続きを書きたいと思ってます。私も無事に妊娠・結婚するエンドを読みたいですw (2020年6月11日 8時) (レス) id: e672c225a3 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もちもちさん!お話全て読ませて頂きました!すごく感動してとても読み応えがありました!是非続編書いて頂きたいです。番外編でのお話楽しみにしてます!個人的にはこの後無事に妊娠してハッピーエンドのお話が読みたいです、w。待ってます! (2020年6月10日 16時) (レス) id: 2bb2dfb322 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - 有岡担さん» ありがとうございます!心に響くものがあったのだとしたらとても嬉しいです(涙)近いうちにまた過去話とか書きたいなぁと思ってます^_^ (2020年5月11日 13時) (レス) id: e672c225a3 (このIDを非表示/違反報告)
有岡担 - もちもちさんのお話最高でした!読んでいてところどころ泣きました。感動しました。番外編楽しみに待ってます。 (2020年5月11日 1時) (レス) id: a06e75bb6c (このIDを非表示/違反報告)
もちもち(プロフ) - 名無し24427号さん» ありがとうございます!番外編をいつか更新した際にはまた読んで頂けると嬉しいです! (2020年1月1日 7時) (レス) id: e43ac0a964 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちもち | 作成日時:2019年12月22日 21時