雲の切れ間から After Story - Daiki.A

038 - 高3 後夜祭 ページ39

.



体育館の中が薄暗かったから、妙に廊下が明るく感じた。



廊下の壁に寄りかかってスマホを見ていた田邊くん。 私に気が付くと歩いてきた。



田邊「すみません、急に変なタイミングで……」


「いや…大丈夫だけど……」



やだな……
さっきの紗奈のせいでなんかうまく話せない。



告白なんて……私の方が妙に意識しちゃってる。



少し移動していいですか？ って言われて、体育館の裏まで歩いた。







ーー







田邊「あの…雰囲気でもう察したかもしれないんですけど、」


「う……うん……」



紗奈の勘が当たるなんて珍しいな、って。
ちょっと冷静だった。



田邊「先輩のことが好きです。
去年からずっと気になってました」


「……そうなんだ」








変な沈黙が流れた。



こんな時、なんて言えばいいんだろう。



「えっと……、田邊くんは良い子だなぁとは思ってるんだけど、」


田邊「知念先輩と別れたんですよね」



食い気味に話しかけられて、さらになんて言えば分からなくなった。



「あ、うん。 それは……だいぶ前に」


田邊「今好きな人はいないんですか？」


「え………」



そう言われて思い出すのは、



当然………大ちゃんの顔だった。



田邊「分かってます。
…………有岡先輩ですよね？」


「ふぇっ？」



彼の口からその名前が出たことに驚いて、声が裏返った。



田邊「好きな人の好きな人って…分かるんです。 つい目で追っちゃってるからかな」


「……………あの……私」



申し訳ないけど…



告白を断って早くこの話を終わらせたい。



そう思ったのに…



田邊「でも、有岡先輩とは付き合えないんですよね。 俺、直接確認したんです」


「……………なんの話？」


田邊「『あいつとはそういう関係になれないから』って有岡先輩が俺に断言したんです」


「……」













幼馴染以上にはなれない…

好きでいちゃダメ…














去年、そう大ちゃんから言われた。



でも、



私は未だに受け入れられずにいた。



.

039 - 高3 後夜祭→←037 - 高3 後夜祭

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す