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明らかにさっきと反応が違う。
私が思い浮かべているのは昼間の光景。
大貴「…………」
「…………」
なんだろう。この沈黙。
何を考えてるのかな。
私の緊張が伝わらないように……
真横で騒がしく鳴り続けるゲームのBGMが静かにならないことを祈った。
お兄ちゃんの視線はゲーム機から外れて、明らかに泳いでいた。
まばたきの数が急に増えたのはゲームで目が乾いたから……?
大貴「……………それもアウトだな」
「…………そっか」
お兄ちゃんはその後、何も言葉を発さなくなった。
私も気まずくなって何も訊かなかった……
ううん、訊けなかった。
『昼間、実優先輩と仲よさそうに手繋いでたね?』
…そう訊けたらいいのに。
いや、嫌だなそんな訊き方するのは。
手を繋ぐのがダメなら、今日のお兄ちゃんはアウトだね。
…心の中でそう呟いた。
そういえば今日の放課後……慧先輩が何か言いかけてた。
実優先輩とお兄ちゃんがまだ付き合ってるのか訊いた時、
(慧「ーー Aちゃん知らないんだ」)
知らない……って何のことだろう。
お兄ちゃんに背を向けて、枕元にあったスマホを取り出した。
まずは、お兄ちゃんとゲームで対戦中のちーちゃんに……
Aお兄ちゃんがムカつくからぼこぼこにしちゃっていいよ
そして、慧先輩に……
A実優先輩とお兄ちゃんのこと、何か知ってますか?
〜♪
ものの数分でメッセージ受信音が鳴った。
侑 李何?もう喧嘩したの?仲がよろしいようで
「よろしくないっ!!」
大貴「は?……な、…なに?」
ちーちゃんのメッセージにイラッとしてつい声に出してツッコんじゃった。
横にいたお兄ちゃんが不審がってこっちを見てきた。
〜♪
もう一度メッセージ受信音が鳴った。
慧知ってるけど教えちゃったら俺ただじゃ済まなそう
Aそこをなんとか!
慧仕方ないなぁ、後悔しても知らないよ?
今度教えてあげる
慧先輩ってこういう時すごく楽しそうなんだよね。
感情が伝わらない文章でのやり取りなのに、画面の向こう側でニヤニヤしてる先輩が容易に想像出来る。
大貴「あぁっ! 手加減しろよなぁ……」
お兄ちゃんが隣で悔しがる声を聞きながら眠りに落ちた。
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作者名:もちもち | 作成日時:2019年11月2日 22時